【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「ママ!」

 ハッと振り返ると、タマラに手を引かれたアーラとパーヴェルの姿があった。戻りが遅いからと探しに来たのだろうか。

 ライザとイグナートの状況をどう判断したのか分からないが、双子は揃ってタマラの手を振り切るとこちらに向かって駆けてきた。

「ママ、だいじょぶ?」

「わるもの、やっつける?」

 まるでライザを守るように、アーラはライザの脚にしっかりと抱きつき、パーヴェルはイグナートを見上げて威嚇するような怖い顔をしている。

「……ママ、って」

 呆然としたようにイグナートがつぶやく。驚きのためか腕を掴む力が緩んだことに気づいて、ライザはイグナートの手を振りほどいた。双子の存在を知られたことに内心焦りつつも、急いで子供たちを抱き上げる。

「だいじょぶ? ママ、いたいいたい?」

「わるいこ、メッてする!」

 心配してくれる子供たちを強く抱きしめて、ライザはイグナートに背を向けた。 

「ごめんなさい。あなたとは、もう会わない」

 顔を見ずに、それだけ告げる。そのまま歩き出そうとしたが、イグナートの声が追いかけてきた。

「その子たちは……俺たちの子だろう」

「違うわ」

 反射的に否定したものの、イグナートがそれを信じていないことは気配で分かる。

「違うの。本当に……あなたの子では、ないわ」

 彼に責任を負わせるつもりはないのだ。ライザは頑なに繰り返した。

 イグナートは、なにも言わない。沈黙が逆に怖いが、ライザはそのまま振り返らずにタマラの方へと向かった。

「ライザちゃん、あの……人は」

「私が、騎士様の知り合いに似ていたみたいで……それで、声をかけられただけです」

 硬い口調の言い訳を、タマラも信じたわけではないだろう。久しぶりに顔を見てあらためて思ったが、双子の顔立ちはイグナートによく似ている。彼と子供たちに血の繋がりがあることは、タマラも分かっているはずだ。

 それでも彼女は、なにも聞かずに黙ってうなずいた。その優しさに甘えて、ライザは硬く唇を引き結ぶと再び歩き出した。

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