【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
「待って、誰か来たら」

「来ないよ。誰も近づけさせるなと命じてある」

「でも」

「これ以上俺を焦らさないで、ライザ。再会したあの日から、ライザに触れたくてずっと我慢してるんだ」

 懇願するように囁かれ、ライザはうなずいて手を下ろした。彼に触れたい気持ちがあるのは、ライザだって同じだ。

 そっと唇が重なった瞬間、胸の奥が苦しくなるほどの喜びに満たされた。ずっと忘れられなかった、懐かしいぬくもり。啄むように何度もキスをしながらライザの髪を耳にかける仕草も、かつてと何一つ変わっていない。

「……ずっと、こうしたかった。愛してる、ライザ」

「ん……ふ、ぁ」

 やがて深くなっていく口づけに、思わず声が漏れる。慌てて堪えようとするものの、イグナートの舌を絡められると、それだけで鼻にかかった声をあげてしまう。

「だめ、声……出ちゃ……んぅ」

「大丈夫。ここにいるのは、俺だけだ」

 正直なところ、イグナートに聞かれることも恥ずかしいのだが、彼はむしろ嬉しそうな表情だ。

「ライザのその声は、本当に可愛いから。いつもしっかり者のライザが、とろんとした顔になるのを見るの、好きなんだ。その顔をさせてるのが俺だということにも、俺だけが見られる表情だということにも、すごく興奮する」

「そんな顔、してない……」

 反論するものの、語気はどうしても弱くなってしまう。イグナートとのキスは心地よくて、いつだってうっとりと溺れてしまうから。

「本当はこのまま抱きたいけど……。さすがにがっつきすぎだと思うから、我慢する。ライザの家のこともちゃんとして、それからにしたいんだ」

「え……あ、うん。そうね」

 ほんの少し期待してしまったことが恥ずかしくて、ライザは視線を泳がせつつうなずく。

 イグナートはちゃんと自制してくれているのに、うっかり快楽に流されそうになった自分が恥ずかしい。

「もちろんライザがしたいなら、このままベッドに行っても構わないが」

「だ……大丈夫!」

 顔をのぞき込まれて、ライザは慌てて首を横に振った。このまま抱かれても構わないと思ってしまったことなんて、決して口には出せない。

 それを見て、分かったとうなずいたイグナートは、再びライザの顔をのぞき込んだ。

「その代わり、キスはもっとしたい。離れていた時間の分だけ、たくさん」

「三年分……」

「もちろん、あらためて三年分抱くから、その時は覚悟していて」

 悪戯っぽくそう言って、イグナートの唇が重なる。冗談めかした彼の言葉の裏に、重たいほどの想いを感じ取ったライザは、ほんのりと疼く身体を自覚しながら与えられるキスに没頭していった。

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