私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
頬に伝わる体温と、すぐ近くにある人の気配。


これは分かる。


だが、


"柔らかな感触"


これだけが理解出来なくて。





耳を割く程の悲鳴や歓声に閉じていた目を開くも、そこには王子役の皇が私を見下ろしているだけ。


何をした?そう聞こうにも劇の最中だしどうすることも出来ずに魚のように口を開け閉めすることしかできない。


「台詞」


私だけに聞こえるように喋ったかと思えば、どうした?と言わんばかりに綺麗な笑みを浮かべるこいつ。


『・・・ああ、王子様。貴方が私を眠りから目覚めさせてくれたのですね』


そうだ。こいつは後で問い詰めるにして今はこの場をなんとかしなければ。


頭が真っ白な状態でも口は記憶していた台詞を紡ぎ出す。


なんともまぁ便利な自分の体に感謝し、最後の結婚式のシーンに移るために舞台袖へと下がる。


「ちょっとちょっと!さっきのシーン!あれどうしたのよ!?」


結婚式と言っても衣装チェンジなどはなく、ベールを被るだけなのだが、今回も手伝ってくれるのか先程の女子生徒に身なりを整えられる。


手伝ってくれるのは有難いが深堀しないでくれ。


「あれどう見たってキスしてたわよね!?じ、実際の所どうなのよ!?」


「う、うるさいわ」
< 188 / 200 >

この作品をシェア

pagetop