私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
そう、本来は皇の台詞の後に証明を落とし予め用意されていたシルエット映像に切り替わる予定だったはず。


そっと唇の端に触れ先程のシーンを思い出す。


手で隠しながらあいつは、口付けを落とした。





本当に唇同士だったかも曖昧な、"僅かにズレた箇所"に。





「〜ッ!」


キス、してただぁ!?


・・・あんなのッ、ノーカンだろッ!?


口付けと呼べるかも怪しいし!?


それに問題は、


舞台袖に下がる瞬間、


あいつは揶揄うように笑っていやがった。


あれはもう確信犯だろ!?何がしたいんだあのセクハラ男は!


思えばお化け屋敷を後にしてからやたらと皇からの視線を感じていたような気がしなくもないが・・・。


しかしそれがなんだと言うんだ。相変わらず何考えてるかわからん奴だ。


悶々とする中身支度を整え終え再度舞台袖へと移動する。


(くそう、あの男にこの借りを返す方法はないものか)


「お、おい!なんで綾波さんあんなに不機嫌なんだ!?」


「誰だよあの人怒らせてんの!」


「顔のいい人を怒らせると更に怖くなるっていうけどまじなんだな」


「役とはいえ今から結婚式を挙げる人の顔じゃないわよ。ほら、もう出ないと」


「分かってるわ。・・・!ねぇ、これ借りていい?」


「え、ええ。問題ないけど」


舞台へ上がる瞬間、視界に入った"それ"を手に持つ花束で隠しながら照明の先へと進む。
< 189 / 200 >

この作品をシェア

pagetop