私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
ましろんの事を話す姿はまさに愛する子供を見る親そのもので一つの疑問が浮かぶ。


正真正銘の血の繋がった家族なのに、


「なんでこんなに初々しいか?」


にっこりと笑うその姿にはっとする。


なんで分かったんだよ。いい人なのは間違いないんだけど、全てを見透かされてるような気分にさせてくる人だ。


これが大人の余裕というやつなのかな?朔夜達が食えない人だと言ってたのにも納得。


「あの子とは一緒に暮らし始めて数年しか経ってないんだよ。といっても殆ど帰って来れてないんだけど」





「それってどういう、」


「僕の家の事情であの子が小さい頃に離れ離れで過ごさなきゃいけなかったんだ。あの子は妻に引き取られた訳だけど、・・・親としてあってはならない感情をあの子は向けられてたんだ。それに気付いたのは数年前。そこからなんだよ一緒に住むようになったの」


薺さんは視線を落として左手の指輪を眺める。


あの子の親として妻とは縁を切るべきだと思う。


だけど妻がそうなってしまったのも僕のせいだ。


僕が愛さなきゃ妻は暖かで幸せな家庭を築けたはずなのに。


「だから妻を責めることは出来ないし、いい父親を演じることしかできない僕だからあの子もきっと距離を縮められずにいるんだと思う」
< 27 / 119 >

この作品をシェア

pagetop