私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「そんな事ないだろ」


「え?」


「少なくともあんたといた綾波は幸せそうだった」


朔夜の言葉にましろんの笑顔を思い出す。


そうだよ、じゃなきゃあんな笑顔はしないはず。


俺が嫉妬なんてするはず、ないんだ。


「そうなのかな・・・。君はあの子のことよく見てるんだね」





この親子の事情を知ってなんて言えばいいのか分からずにいると薺さんが口元に人差し指を当て静かにするよう伝える。


何故?と思う前に玄関の方から音がする。


きっとましろんが帰ってきたんだ。


「戻りました」


「おかえり。悪いけど急ぎの仕事思い出しちゃったから僕はもう行くよ」


「もう、ですか・・・?」


「うん、ごめんね。いつもバタバタしちゃって。次はもっと早く帰れるようにするよ」


「・・・そうですか、無理だけはしないでくださいね。門まで送ります」


先ケーキ食べてて?と言われたため食器棚から皿とフォークを人数分取り出そうとキッチンに向かう。


リビングから出る際薺さんは朔夜に向かって「君のこと気に入ったよ」なんて言ってたからましろんは不思議そうにしてたけど。





今日はましろんについて知れた日だったな・・・。



本人から聞いた訳じゃないのが少し引っ掛かるけど、肌が弱いとか気にしておくべきことが知れたのは良かったかも。こうして少しずつ、あの子の事を知っていきたい。
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