俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
いち早く食べ終えた運転手が黒見にお礼を言ってから車を発進させた。

揺れてこぼさないように気をつけながら、なにげなく黒見に言う。

「ジャンクフードも召し上がるんですね。意外に思いました」

「この出張でお前に意外と言われたのは三度目だ」

不満そうな言い方ではなく、むしろ少し嬉しそうだ。

ワインなら似合うけれどコーラを飲む姿も意外に感じていると、彼が普通の口調で続ける。

「こっちの大学に通っていた頃からホットドッグはよく食べた。安くてボリュームがあるからな。学費は奨学金で、生活費はアルバイトで賄った。人生で余裕のない暮らしをしていた期間の方が長い」

「そうなんですか……」

創始者一族の家系ではないのにCEOに選ばれた叩き上げの人だというのは知っていたのに、なぜか生まれた時からセレブな家庭環境だったのではないかと想像していた。

「これも意外か?」

思わず頷くと黒見がおかしそうに笑った。その顔に今までなかった親近感を覚える。

「誤解が解けてよかった。俺は地に足のついた普通の男だ」

(私が雲の上の人だと言ったから?)

二日前の夜、寝落ちする前にそんな本音を漏らしたのを思い出した。

(私たちは対等だとずっと言ってくれていたよね。ビジネスの才能がずば抜けているだけで、それ以外は私と同じ普通の人なんだ。ということは……)

ホットドッグはまだ半分のこっているが、完全に手が止まっていた。

交際を断る大きな理由がひとつ消え、動揺がさざ波のように広がる。

(ま、まだダメ。次の恋愛を始めるエネルギーが溜まっていないし、CEOの恋人になったら働きにくいでしょ)

残された弱い理由をかき集めて、なんとか心の平静を保とうとした。
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