幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
番外編③恋と学園祭







 恋は、前々から、中学生になったら学園祭に行こう、と、考えていた。

 宗介が言うには、学園祭は、学芸会の大きいバージョンで、高校生のは違うが中学生のはさして面白くはない、ということだったが、恋にはそれが楽しい物の様に見えた。

 恋が中等部の学園祭に宗介を誘うと、行ってあげるよ、と宗介は二つ返事で承知した。




 学校。

 朝のホームルーム前、恋が今日の宿題を確認していると、美風がやって来て声をかけた。



「新田さん」

「あ、樋山くん」

「新田さんって、アップルパイとレモンパイ、どっちが好き?」




 美風が聞いた。



「家で作ってみようと思って。好きって聞いたから。」

「ありがとう」

「うちの親も好きなんだけど、作りはしないんだ。料理好きでよくするけど、レシピ見て作ることはあんまりないから、とりあえず練習に。簡単なんだって。」

「嬉しい。パイ好きなんだ。クレープだったら、今度食べるんだけど。」

「食べに行くの?」

「中等部の学園祭あるでしょう?。それに行ってくるんだ。」



 言ってから恋はしまった、と思った。

 宗介と行く学園祭は、2人の秘密のデートで、恋に片思いをしている美風に言ってはまずいことになる。

 恋はいつも、美風にうっかり口を滑らせた。

 案の定、美風は目ざとく恋に聞き返した。



「行くって、上野と?」

「え、うーん。」

「ずるい。」



 美風は腕を組んだ。



「新田さん、よく僕に平気でそういう事言うよね。」

「ごめん」

「神経質なタイプだったら、君の事嫌いになるよ。デリカシーない。おかしいよ。君の事好きだから言ってあげるけど。」

「……」

「わざとじゃないなら、別にいいけど。気をつけてよね。ってかさ、聞いた以上は」



 美風は言葉を切ってきっぱり宣言した。



「僕も連れてって貰う。」

「ごめん」

「連れてってくれなきゃ、さっきの事許さないよ。一生恨んで、授業中にみんなの前で呪符貼ってやる。狐の姿で先生に当てられたい?」



 恋はぎょっとして手をあげた。


「ちょ、ちょっと待って。困るよ。」


 美風は呆れ顔で恋を見返した。


「……っていうのはさすがに嘘だけど。そんな事したら、せっかくの僕の強みがなくなっちゃうし。新田さん、冗談と本気の区別も付かないの?」


 美風が言った。


「とにかく、新田さんを上野と2人きりにさせるもんか。僕も絶対連れてって貰うからね」



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