敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
 十八時の就業時間が過ぎ、残業確定。
 こういうなすりつけの仕事は、今始まったことではない。

 地味な見た目なのもあってか。
 業務部の社員だけでなく、他部署の人も結構無茶な押し付けをしてくる。

 業務部は、内部プロセスに関する業務をこなすため、他部署との連携は避けられない。
 営業部から新たな発注がくれば、製造部や資材部に納期が間に合うか確認しなければならないし、商品の在庫を把握するには商品管理部に問い合わせなければならない。
 更には、国内外の自社商品の把握だけでなくデータの管理も担うため、常に同時に幾つもの案件を抱えなくてはならないのだ。

『超』がつくほどのお人好しな性格だと言われる美絃は、困っている人がいれば放っておけないし、頼られるとどうしても断れない。
 言いなり、断り下手と言われても言い返す言葉が出ないほど、主任にもかかわらず、雑務もこなす日々。 
 望月さんは先輩ではあるけれど、美絃の方が主任で階級が上なのに、どうしてもいいように扱われてしまう。

「はぁ~~、今日も頑張らなきゃっ!」

 気合を入れ直し、パソコン画面をクリックして追加発注の確認を始めた。

***

「ただいま~」
「おかえり。俺も今さっき帰って来たとこ」
誠二(せいじ)くん、夕ご飯は?」
「会食だったから済ませて来た」
「そうなんだ。じゃあ、お風呂用意して来るね」
「あ、いい。さっきシャワーした」
「……そっか」

 二十時過ぎに帰宅した美絃は、寛いでいる彼を見て、ホッと癒される。
 地味子の代表のような美絃にも、人並みの幸せがある。
 
 同じ会社に勤務する営業部の田嶋(たじま) 誠二(せいじ)(同期・二十八歳)と二年前から交際していて、一年ほど前から同棲しているのだ。

「来週の土日、視察で沖縄に行くことになった」
「えっ、……映画観に行く約束だったよね?」
「仕事なんだから仕方ないだろ」
「……うん」

 美絃はシュンと肩を落とし、重い足取りで浴室へと向かった。
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