幼なじみは狐の子。3〜その後の逆ハーレム〜
会席料理を出す料亭には、広い駐車場があって、目の前には日本風の庭園が広がっていた。
広い和室に通されて、恋と恋の両親、宗介と宗介の両親はテーブルに付いた。
まず前菜が運ばれてきた。
「いただいて良いのかしらね。」
恋の母親が言った。
「宗介くんも、食べて食べて。今日はほんとにありがとうございますだわ。お世話になってるのはいつもの事だけど。」
「こちらこそお世話になって……それじゃ頂こうかしら。……宗介も恋ちゃんも早いもので、もう来年は受験生よ。宗介は塾に行かせようかって考えてるところなの。駅向こうに進学実績のある塾があるから。」
「宗介くんは優秀でいいわねえ。うちは勉強はからっきしよ。受験はしないでうちの中学の高等部でいいかなって考えてるの。簡単だしね。ほんとに2人仲良いまま進んで良かったわよ。こうなるんじゃないかって期待してたの。」
「今日は……結納をそろそろ、宗介がどうしてもっって言うんで、まあまあ、もうそろそろかなって、こういう運びになりまして。」
「宗介くんはしっかり者だね。もうそんな事まで考えてたのか。頼りになるね。」
恋の父親が言うと、
「まだまだほんの子供だと思ってたのに、もう父親にいっぱしの口を聞いて結婚するって聞かないんですよ……」
と宗介の父親が笑った。
「運命的。僕恋とのこと運命だと思ってます。一生大切にします。」
宗介が静かにそう切り出して、恋の方を見た。
恋はドキっとして箸から前菜のマリネを取り落とした。
「ああ、もう恋、服を汚して。ドジなんだから。」
「ティッシュあるわよ恋ちゃん、はいどうぞ。先に拭いとけば大丈夫よ。」
恋は宗介に睨まれながら下を向いてワンピースを拭った。
宗介は気を取り直して話を続けた。
「一生恋を守っていこうと思ってます。先は長いって言うけど、僕はもう全部予定立ててます。この間お渡ししたタイムテーブルの通り。僕たちの結婚を認めてください。」
宗介の家の人たちがきちんとタイムテーブルを立てるのは知っていたが、恋は宗介がそれを恋の親に渡しているのを知らなかった。
「恋の事、愛してるんです。子供の間って思ってない。大人になっても変わりません。恋を大事にして生きていこうと思ってるんです。これから、」
宗介がそこまで言ったところで、つん、と気配が来て、恋はクシュン!と盛大にくしゃみをした。
みんなが一斉に恋を見て、恋はずず、と鼻を啜った。
宗介が隣から、笑顔のまま恋の頭を一発パチンと打った。
「宗介!」
宗介の母親がたしなめると、恋の母親がホホと笑った。
宗介は膝に手を置いて片手でこほんと咳払いした。
「……これから一生。……今日来て僕が言いたかったのは、結婚を許して欲しいって事なんですけど。」
しばらく誰も何も言わなかった。
「許すも何も無い。2人の意思だ。めでたいことです。今日は祝いましょう。」
口を開いた恋の父親が言った。
「詳しい話はまた話し合って決めれば良いわよね」
「今日はめでたいなあ。」
前菜が下げられ、寿司が出された後、それもまた下げられ、椀物が出た。
「恋。」
宗介が小声で言った。
「結婚が決まったって自覚ある?。良かった。お前はもうこれからずっと僕のものだね。一生離れないよ。」
恋はバイブが鳴っているケータイをそのままにしながら、こくんと頷いた。
ケータイに光る、メールの最出し人は、美風となっている。
宗介の母親が、
「本当に良かったわ。宗介はずっと恋ちゃんばっかり見てきたから、こうなるのをずっと待ってたのね」
と言って笑った。