アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
 一国を揺るがしかねない力を継承している。そしてその母 リリィオス公妃は自国とを守る為に孤立を選び、この世界(リノ・フェンティスタ)を救った。
 つまり、〝彼女の隣に立つ〟という事はこの世界を背負う覚悟を持つという事だ。

(スズランを守り抜く──。下を向いている暇などない……!)

 ラインアーサは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。表情は変えずに視線だけを鋭く、気を引き締めた。
 この件を一番、現実的に受け止めていたのは恐らくジュリアンだ。
「使い手を選ぶ力」この言葉が引っかかる。
 選ばれなければ扱えない。裏を返せば───選ばれれば圧倒的な力を得るという事。
 ジュストベルが何故、今この話をしたのか。今後の国際関係にどう影響するか。この場合、やはりスズランの存在が〝鍵〟となってくる。もし公になった場合、どんな波紋を描くのか。大切な物を守る為には、様々な視点も考えておかなければ。
 だからと言って、スズランを見る目は変わらない。むしろ少し柔らぐ。

(何も望まずに、巻き込まれている彼女をちゃんと救えるのは多分……アーサ、お前だけだ。そして俺は、その為なら全力で二人の支援に回る)

 ジュリアンにとって、ローゼン家に仕える家に生まれた事は、誇るまでもない当然の事だった。それは幼い頃からラインアーサの隣で過ごす日々の中で、息をする様に身についたものだ。
 午前の会議以来、リーナの胸もまた静かに揺れていた。
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