アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
先程までの空気とは打って代わり、皆がジュストベルの言葉に集中していた。
「とりわけ雷花の神気は、その使い方次第で国ひとつを傾けかねない」
「凄まじい力だな」
ラインアーサが小さく息を飲む。
「ええ、──使い手を選ぶ力です。故に、小フリュイ公国は他国との関わりを最小限に留めてきました。強さを誇るためではなく、守るために」
ジュストベルの話に、場の皆がそれぞれ感銘を受けていた。
───そうだったんだ。
胸の奥に言葉が入ってくる。
スズランは小フリュイ公国の在るべく姿を、素直に受け止めていた。〝強いからではなく、守るために閉じた〟そう知って何処か安堵すると同時に疑問も生まれる。
(守るために……じゃあ今まで誰を、何から守っていたの?)
ほんの少し考えるが、まだ深掘りは出来なかった。
朧気な記憶を辿り、母の背中を思い出す。凛としていて、静かでどこか遠い背中───。今の時点では迷いもない。ただ「覚えておこう」と心に刻んだ。
ラインアーサは既に知識として、知っていた。以前、書物庫から借りた小フリュイ公国に関する書物が未だ自室の机に積まれたままになっている。だが、それがスズランの母国であり、その血が彼女に流れていると知った今、その文字列はまるで別の意味を持ちはじめていた。
スズランを守る。それは彼にとって最早誓い同然だ。彼女を愛しく思う心もその覚悟も、何一つ変わらない。
「とりわけ雷花の神気は、その使い方次第で国ひとつを傾けかねない」
「凄まじい力だな」
ラインアーサが小さく息を飲む。
「ええ、──使い手を選ぶ力です。故に、小フリュイ公国は他国との関わりを最小限に留めてきました。強さを誇るためではなく、守るために」
ジュストベルの話に、場の皆がそれぞれ感銘を受けていた。
───そうだったんだ。
胸の奥に言葉が入ってくる。
スズランは小フリュイ公国の在るべく姿を、素直に受け止めていた。〝強いからではなく、守るために閉じた〟そう知って何処か安堵すると同時に疑問も生まれる。
(守るために……じゃあ今まで誰を、何から守っていたの?)
ほんの少し考えるが、まだ深掘りは出来なかった。
朧気な記憶を辿り、母の背中を思い出す。凛としていて、静かでどこか遠い背中───。今の時点では迷いもない。ただ「覚えておこう」と心に刻んだ。
ラインアーサは既に知識として、知っていた。以前、書物庫から借りた小フリュイ公国に関する書物が未だ自室の机に積まれたままになっている。だが、それがスズランの母国であり、その血が彼女に流れていると知った今、その文字列はまるで別の意味を持ちはじめていた。
スズランを守る。それは彼にとって最早誓い同然だ。彼女を愛しく思う心もその覚悟も、何一つ変わらない。