アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

始まりの議場にて


 風が薄く、心地よく揺れる。


 大きく切り取られた窓の向こうでは庭園の樹々がそよぎ、その光が床や机に淡い模様を落とす。


 緊張してる者も、どこか救われるみたいな静けさ。

 その中心で国王であるライオネルが微笑んでいる。
 重い議題も〝ただの未来の話〟の如く、軽くしてしまう。そういう王の光に、此処に居る皆の心が解されているのは間違いなかった。


 朝風が止む頃には、見事な秋晴れの空をひろげるシュサイラスア大国。

 即今、王宮の会議の間にて協議が行われていた。
 中央の上座には、底抜けに明るい王 ライオネル。
庭園の光を背にして座るその姿は、まるで太陽の様にあたたかい。

 窓側の長机には静かな影を落とすハリ、誠実なジュリアン、王宮の空気を読むユージーン、息を整えるセィシェル。
 机を挟んだ反対側には聡明なイリアーナ、未来を担うラインアーサ、そしてその隣に寄り添うスズラン。
 席は持たず、後方に静かに立ち空気を支える者たち──ライオネルの側近 コルト、執事であるジュストベル、侍女 サリベルとリーナ、侍医 エルベルト。


 ライオネルは今後の〝決め事〟をこの顔ぶれで行うと定め急務、この場を設けた。
< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop