アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
始まりの議場にて
風が薄く、心地よく揺れる。
大きく切り取られた窓の向こうでは庭園の樹々がそよぎ、その光が床や机に淡い模様を落とす。
緊張してる者も、どこか救われるみたいな静けさ。
その中心で国王であるライオネルが微笑んでいる。
重い議題も〝ただの未来の話〟の如く、軽くしてしまう。そういう王の光に、此処に居る皆の心が解されているのは間違いなかった。
朝風が止む頃には、見事な秋晴れの空をひろげるシュサイラスア大国。
即今、王宮の会議の間にて協議が行われていた。
中央の上座には、底抜けに明るい王 ライオネル。
庭園の光を背にして座るその姿は、まるで太陽の様にあたたかい。
窓側の長机には静かな影を落とすハリ、誠実なジュリアン、王宮の空気を読むユージーン、息を整えるセィシェル。
机を挟んだ反対側には聡明なイリアーナ、未来を担うラインアーサ、そしてその隣に寄り添うスズラン。
席は持たず、後方に静かに立ち空気を支える者たち──ライオネルの側近 コルト、執事であるジュストベル、侍女 サリベルとリーナ、侍医 エルベルト。
ライオネルは今後の〝決め事〟をこの顔ぶれで行うと定め急務、この場を設けた。