再び縁結び
23ー切ない花火
[詩織視点]
私達は少し人目がつかない会場から少し離れた静かな東屋にいた。りんご飴やポテト、焼きそばなどが入った袋をベンチに置いた。
「めっちゃ買っちまったよな。秋海棠先生。はっはっは」
目の前の彼は仁王立ちしながら豪快な笑い声を上げる。その元気さ分けてもらえたら良いんだけど。
「そうですね。飛竜先生。たくさん食べる男はモテますよ〜」
「そうか。それなら嬉しいんだが。って言うか最近東雲先生とどうなんすか」
彼はニヤニヤしながら小声で聞いてくる。その名前を出された瞬間、私の頬は赤くなっていた。見られないように両手で頬を隠す。
「そ、そ、そんなこと急に聞かないで、くださいっ。あ、飛竜先生こそどうなんですかっ。こないだ好きな人できたって言ってましたよね」
ー...俺、新たに気になる人ができたんです。
ーまだ、1回くらいしか直接しっかりと話したことないん人ではあるんすけど、その人が暗い顔してる時に守りたいなって思って。
彼が自ら言ってきたことだ。私だけ好きな人を知られてるなんて不平等だ。飛竜先生が好きな人も知りたい。
「は、好きな人なんて俺言ったっけ」
彼は目を見開く。忘れているのか、あの時の会話を。思いっきり、彼の胸を叩いた。
「忘れないでくださいよ〜。言ってたじゃないですか、数川先生とラーメン行った話聞いた時に新たに気になる人ができたって」
「あーー、言われてみれば秋海棠先生とそんな話した記憶があるようなないような...」
彼は頭を掻いて目を逸らした。きっと、私と話した内容だったから忘れたのだろう。
「で、好きな人って誰なんです」
ストレートに聞くと顔を赤くして口笛を吹き始めた。いつもは大声で豪快で脳筋なのに、こう言う時は照れてるの本当面白い。すると、突然彼は真面目な顔でこちらを見つめる。
「そんなに知りたいのか、俺の好きな人...。本当に誰にも教えないこと約束してくれるか」
初めてこの人のこんな表情を見た気がする。私はこれ以上からかってはいけないと思い、頷いた。すると、彼は手招きをした。もうちょっと近付いてきてという合図だ。
「ん、どうされました飛竜先生」
「ちょいと耳を貸してくれ」
私は左耳を彼に向ける。すると、こそっと教えてくれたのだ。
「...さん」
私は耳を疑った。まさかその人だとは。教師としてリスクが高すぎる。それってつまり、東雲先生を敵に回す事にもなりえる。
「飛竜先生...。その人のことを好きになってたんですね」
私はゆっくりと目の前の椅子に腰をかける。彼は、息を吸ってはいた。先程よりも少し柔らかい表情をしている。
「だから、あんま言いたくなかったんだ。でも、誰にも話せなくてモヤモヤしてた」
なんだか彼に申し訳なかった。わたしが軽率な行動をしてしまったせいで彼が誰も信じられなくなったらどうしよう。
「...ごめん飛竜先生。こんな事無理やり聞いちゃって」
「いやいや、そんなことはないっす。お互いなかなか難しいですけど、頑張りましょうか」
飛竜先生は明るい声で、私に拳を差し出した。私は、申し訳ないと思いつつも拳をぶつけた。
「はい。頑張りましょ、飛竜先生」
「と言うことで、俺は東雲先生と幸助達を探しに行ってきます。皆で花火見た方が最高だと思いましてな」
彼は、私に軽くウィンクすると背を向け人混みに戻ってしまった。皆でか。楽しみだな。食べ物を分け合いながら、同僚達と見る花火は、どんな高級レストランから1人で見る花火には敵わない。
あれから何分経ったのだろう。飛竜先生達が帰ってくる気配は全くない。東雲先生や福田先生達が見つからないのだろうか。
バンっと、空に花火が打ち上がり始めた。それは儚くすぐに煙となり散ってしまう。
結局1人だ。
こう言う時くらい東雲先生と一緒にいられると思っていたのに。どうして。
ー私もこっちに気になる食べ物が
ー僕はこっちに
どうしてあの時の私は、彼と同じ方向に行かなかったのか。もしあの時選択肢が違っていたのなら、少しは変わっていたのかもしれない。隣にもしかしたら彼がいたのかもしれない。
後悔しても時間は戻らない。