あなた専属になります

今だけは

副社長室に届いた写真を前に、私は立ち尽くしていた。

ラウンジで私が河内さんと一緒にいる姿。

顔ははっきり写っていないけれど、分かる人には分かってしまう。

「……誰がこれを」

もう終わりだ……こんなものを会社の人達に見られていたら……。

私は震えていた。

河内さんは写真を机に置いたまま、低く言った。

「送り主は不明だ。だが、まだ広まってはいない」

その言葉に少し救われるはずなのに、胸は苦しかった。

「もし広まったら大変な事になります……」

「その時は俺がお前を守る」

私だけ守られても意味がない!

「河内さん、お願いです。もうラウンジには来ないでください」

河内さんは不服そうな顔をしている。

「私たちの今後のためです。これ以上目立ったら、本当に取り返しがつかなくなります」

「わかってる。……だが辛い」

なんとか河内さんを元気付けないと。

「心は、ずっとあなたのものですから!」

その瞬間、彼の腕に強く抱き寄せられた。

「心だけじゃ足りない。体も俺のものだ」

ふと昨日の夜の事が頭をよぎった。

一気に恥ずかしさでいっぱいになった。

河内さんが距離を縮めてきた。

「河内さん…ここは…会社ですよ?」

全く表情が変わらなかった。

「知ってる。そんな事はどうでもいい」

どうでもよくない!

「こんな事してるのまた証拠撮られたらどうするんですか!?」

「そんな事する奴は始末してやる」

冗談だろうけど、冗談に聞こえない。

とうとう口を塞がれてしまい、抵抗を試みたものの、思考を溶かされ……

まるで今まで耐えていたものが堰を切って溢れ出したかのような、河内さんの欲望に飲み込まれてしまった……

「体も俺専属だな」

鬼畜……!

「大切にするって言ったのに」

その言葉で我に返った河内さんは私を抱きしめた。

「嫌な思いをさせて悪かった。ただ……あそこでまた知らない男に優美が接客する姿を想像すると、止まらなくなった」

私があそこで働いてる事も、ここで働いてる事も河内さんにデメリットしかない……

「私がこの会社を辞めれば、あなたに迷惑はかかりません」

「嬢を辞めろよ……」

「わかってます、来月には辞めます。……ただ、借金を早く返したいんです」

「だから金はもういらないって言ってるんだよ」

どうしよう、心が折れそうになる。

自分で返したいのに、そのせいでこの人を苦しめてしまう。

「優美を誰にも触れさせたくない。初めて会った時からずっとそう思ってる。俺のわがままなのはわかってる。俺を好きなら、今すぐあそこを辞めてくれ」

──無責任なのはわかってる。

でも、私はこの人をこのままにしておけない。

「わかりました……。お店に今日電話します」

「ごめん。ありがとう」

優しく触れる唇が私達の心を深く結びつけた。

未来はまだ見えない。

でも今だけは、この人の全てを受け止めると決めた。
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