君の隣で

プロローグ

朝の光が、教室の窓から優しく差し込む。


神楽紗凪はいつものように窓際の席で本を開き、静かに文字に目を落としていた。


髪の一筋が肩に落ちるたび、誰もが息をのむほどの美しさだが、本人はそれを意識せず、ただページの世界に没頭している。


ふと、教室の空気がほんの僅かに変わった。


――窓の外の風が、ほんの一瞬、異様に揺れた。


神楽が目を上げたとき、窓際に立っていたのは月城 蓮。


総長と呼ばれる男で、学園中の能力者たちが一目置く存在だ。


黒い制服の裾が静かに揺れ、冷たい視線が自然と神楽に向けられていた。


その時、神楽の胸の奥で、何かの片鱗がほんの僅かに反応した。


光の粒のように、意識せず彼女を包み込む。


月城の瞳が、一瞬だけ光った。


「……君か」


彼の声は低く、静かに響いた。


体が硬直し、心の奥で見知らぬ力が静かに波打った。


それを察したのは月城だけ。


眉を寄せ神楽を見る。


二人の間に、なんとも言えない静かな緊張感が漂う。


この出会いが、静かな日常を壊すものだと、誰が想像しただろう。


「お前にあえて良かった」



「君の隣でいきていたい」


彼女の力は吉か凶か……


誰もしるよしなんてなかった。
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop