再会は小さなぬくもりと一緒に
「莉佳子、イノーシング株式会社の新年パーティーに誘われたから一緒に行ってくれんか?」

祖父にそう言われて、ホテルでの立食パーティーについて行った。年寄り一人では不安だということで『美味しいものでも食べれるんじゃないか』というほんの軽い気持ちで参加した。

確かに祖父は『多分面白い人にも会える』と意味あり気な言葉を言っていたが、まさかそれが彼で──別れる決定打になるとは一ミリも思ってもみなかった。


「伊賀上社長、ご無沙汰しております」
「あぁ伊藤先生。ようこそいらっしゃいました」

にこやかに挨拶をするイノーシング株式会社、伊賀上社長の隣に、当たり前のように立っていたのは──晴和さんだった。


「うちの倅も世話になっているみたいで」
「いえ、年寄のわがままで振り回しているのは私の方です。なっ、晴和君!」
「いえいえそんな……肇先生から学ぶことも多いです」

彼は私を見ないようにして、喋っている。
まるで『御曹司モード』のスイッチが入ったように、笑顔に隙がない。

私もさらりと紹介されたが話す間もなく、彼らは色んな人に声をかけられ取り囲まれている。

その中でリュミエールの社長の姿も見かけた。
「この度、こちらの兄から事業を引き継ぐことになりました」と。
「私は別のブランドを立ち上げたので、またお仕事できる機会を頂ければと思っております」と山下さんの隣にいる男性は頭を下げた。
それより印象に残っているのは……その二人の間にいた、同年代の女の子だ。

「晴和君!」と馴れ馴れしく彼を呼び、楽しそうに話す彼女と晴和さん。
彼女は華やかなパーティードレス姿で、顔立ちも華やかで……それは私とは違う世界の人のようだった。
私のパーティードレスは、二十歳の祝いに買ってくれたもの。決して安っぽいものではないはずだが、精一杯したメイクやヘアセットは、やはりどこか彼らのような“上流階級”とは違う何がが染み付いている。
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