再会は小さなぬくもりと一緒に

***
「うわ、大丈夫かな?あの子」

思わずそう呟くほど、当時のハルは酷かった。
まだ片手で掴めるサイズ感の子猫は、ガビガビに泥にまみれて汚らしく、ヨロヨロと歩く姿はいつカラスの餌食になってもおかしくはないように見えた。

私が立ち止まると「な〜ん」と甘えた声を出して足に擦り寄る。これもこの猫の生きる術なのだろうと思いながらも、この弱々しく健気な生き物をほおっておくわけには行かなかった。

私は子猫を抱きかかえると、足早に近くにある祖父の家に向かった。

「おじいちゃん〜助けて!」

一瞬『予備校はどうした?』と言いたそうな顔をしていたが、すぐ子猫を見ると何かを察した。


「とりあえず体をキレイにして病院に行こうか。どれどれ。一応離乳はしとるみたいだが、病気がこっちのばーさんに移るとあれだしなぁ」

当時もう一匹、真っ白な『こゆき』というおばあちゃん猫がいた。
急いで祖父は病院に行く支度を始めたが、猫をキャリーケースに入れたところで「莉佳子は行きなさい」と言われしまい、私は仕方なく予備校に行った。
そして数時間後、予備校も終わり夜も遅いが、猫が心配な私は家には帰らず、祖父の家へと向かった。

「おじいちゃん、どう?」

玄関を開けて叫ぶと──奥の居間の引き戸から見慣れない一人の男性が顔を出した。
その人物こそ彼、伊賀上晴和だったのだ。


「おう莉佳子。とりあえず隔離してくださいと言われたからここに隔離しておるよ」

祖父が二階の部屋のドアを少し開けて、顔を覗かせた。

「それで何て?」

「とりあえず猫エイズは陰性でも寄生虫がおるから隔離しておる。エイズの陰性も正確には母体免疫が切れる生後四カ月以降にならんと正確に出んということで、一ヶ月は隔離せないかんらしいわ」

「じゃああの猫、生後三ヶ月ぐらい?」

「うん、じゃが結構小さめらしいんだわ。栄養失調でこうなったか、元々なんかはわからんと」


祖父が階段をゆっくりと降りてくる。
私は廊下の奥──居間の方に視線をやって、『この人は誰?』と視線で訴える。


「莉佳子、晴和君とは初対面じゃったか?」
「うん。会ったことない」
「この人は囲碁仲間のお孫さんでなぁ。最近一人でも囲碁を打ちに来てくれておる」

あぁ、なるほどと。
祖父は元々会計士を営んでいて、昔からよくお客さんを家に招いていた。そして類は友を呼び……という感じで、元々の繋がりは何なのかがわからない友人が沢山居る。
特に囲碁を打ちに来る人は誰でもウェルカムなので、若くて囲碁のできる人間はお気に入りなんだろうなと思う。

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