一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは
「カンパーイ!」

 解放感あふれるかけ声とともに、長テーブルにずらりと並んだ事務所員がグラスを掲げた。
 忘年会の場は、グラスの合わさる音と所員がテンションも高く話し始める声で、たちまち華やかな喧騒に包まれた。
 二列のテーブルに分かれたメンバーの数は、総勢三十名ほど。所員のおよそ半数弱というところだ。
 私はテーブルの端のほうでハムとチーズの盛り合わせをちまちまと食べつつ、周りを見渡す。
 今年の会場は、倉庫をリノベーションしたレストラン。広々としたフロアは、配線をあえて見せる照明で明るい雰囲気だ。高い天井やむき出しの鉄骨の無機質さが、リノベーションのおかげで現代的な空間に変化している。
 一昨年にオープンしたばかりのここは、なにを隠そう、うちの事務所がリノベーションを手がけた店舗だ。
 私の担当ではないけれど、ちょっと誇らしい。
 ここはクラフトビールが美味しいことでも有名で、今日も店内はほぼ満席。
 私が貢献したのでもないのに、そのことも密かな自慢だったりする。
 でも……やっぱり今日も胃がきゅっと痛む。食べたいように食べるのが怖いと思い続けるうちに、いつしか習慣づいてしまった痛みだ。
 私は千葉で作られたクラフトビールの、華やかな香りとかすかな甘みを堪能しながら、こっそり胃をさする。
 無意識に、目が吉見さんを探していた。
 吉見さんは、一列向こうのテーブルで黙々と前菜のトマトサラダを口に運んでいた。――参加、したんだ。

『――陽彩はどうすんの』
『忘年会? 参加するよ。あ、吉見さん参加しないつもり? 今年の会場はうちが手がけたお店だから、ぜひ建物を見てよ。担当したのは私じゃないけれど、現代的ですごく格好いいの』

 忘年会への出欠を尋ねられたとき、私はそう力説して吉見さんを誘った。
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