代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
「一華さん、今日はありがとうございます」

 到着した会場のホテルへ入ると、待っていたらしい八尋がすぐに近付いてきた。

 優しい微笑を浮かべている。

 今日の会場は、焦げ茶と紅を基調とした、クラシカルで上品な内装のホテルだ。

 豪華な場なのに、彼は違和感なく馴染んでいる。

 もちろん社長令息なのだ。

 こういう場には何度も出席しているだろうし、慣れていて当然だ。

 格好もスマートだった。

 今日は中に赤いネクタイを締めたグレーのスーツを、少し遊び心あるスタイルで着こなしている。

 パーティーという、華やかさを求められる場所だからだろう。

「こちらこそ。しっかり振る舞えるように頑張りますね」

 八尋の目の前まで行って、七海は軽くお辞儀をした。

 それに対して、八尋はにこっと笑う。

「気を張らなくて良いのですよ。取引先が定期で行っている、カジュアルなパーティーです。まぁ、今日は本気の交流よりも、数合わせというところですね」

 緊張をほぐすように説明してくれるから、七海もはっきり笑顔になった。

「それは少し気楽になれます」
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