コイ、アイ。
#3
彼氏…今さっき、目の前で浮気現場を目撃した私の、元パートナー・大翔。
イチバンに囚われすぎて生きるのが苦しくなった高校時代に、こんな私にも尊敬の眼差しを向けてくれたのが大翔だったのだ。
社会人になってもお付き合いは終わらずに、たまにふらりとキャバ嬢に寄ること以外は平和だったと思う。
大翔が私の初めての彼氏だったこともあって、基準がわからないけれど。
間違いなく、あいつは浮気をした。
「今日仕事で夜遅くなる」と告げた朝。
カレンダーアプリの通知には「大翔♡奈津 お付き合い記念日」───内緒で予約してたケーキも、きっとぐしゃぐしゃになってるんだろうな。
無感情のまま、行く宛がなくなった私は公園に行く。
冷たい風が吹きつけ、こぢんまりとした公園は人っこ1人いなかった。
「うわ、…」
無惨にも潰れてぐしゃぐしゃになっているケーキを見て、ようやく遅れて涙がやってくる。
すぐ目頭が熱くなり、久しぶりに声を上げて泣いた。
私の体に容赦なく当たってくる風も、今だけは心地よかった。
「イチバン、じゃなかった、…」
誰かにとってのイチバンにすらなれない。
私はいつだって、ニバン目の女。
「イチバン」 fin.