訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
――『俺は新作執筆のために最近ホテルに缶詰中。亜湖ちゃんは元気にしてる? ノートにボロクソ書き込みたくなるような出来事が亜湖ちゃんの身に起こってないことを願うよ」

――『数週間も亜湖ちゃんの顔を見てなくて変な感じがするよ。せめて声が聞ければと思ってしまうけど、それも課題を達成するまではダメなんだよね?」

――『見返りとして望みを一つ叶えるっていう課題のために最近亜湖ちゃんのことばっかり考えてる気がする」

 ……もう! なんで急にメッセージがやたらと甘いんですかぁーッ!

声が聞きたいとか、君のことばっかり考えてるとか、女心を絶妙にくすぐる言葉のオンパレードだ。

いつの間にここまで女心マスターに成長したのかとビックリである。

それとも言葉を扱う小説家という職業柄、文章で女性の心を掴むのはもともと得意なのだろうか。

今までは主に日程調整くらいの事務連絡しかメッセージを交わしていなかったから知らなかった。

 ……いや、もしかすると、好きな人ができたから私とのやりとりで練習してるとか……?

なきにしもあらずだ。

その場合、私は「その言葉は女心的にいい!」など褒めたり、はたまた「それは全然ダメ!」とビシッと指摘したりすることが求められているのかもしれない。

でも到底それをする気にはなれなかった。

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