訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「息子は、菅野孝太(こうた)という名前だそうだ。会ったことがあるらしいのだが、亜湖は覚えているのか?」

名前を聞いて「菅野、菅野……」と記憶を辿る。

でもまったくピンとくる男性がいない。

 ……えーっと、確か大手商社に勤務する将来有望なエリートって言ってたっけ? 菅野、商社………あっ!


ようやく該当する人物に思い当たった。

そう、秋の初め頃にあった、円香さんが幹事の合コンで隣の席だった人だ。

やたらと言い寄られて、直後に『グチグチノート』に思いっきりボロクソ書いた記憶がある。

“実家が太い”と本人も言っていたが、政治家の息子だったとは。

 ……あの人とお見合い? ただでさえお見合いなんて回避したいのに、より一層嫌になるんだけど。

合コンの時の馴れ馴れしい言動を思い出し、想像するだけでウンザリしてくる。

でも結果的に私はこのお見合いを受け入れざるを得なかった。

その理由は、父に私の気持ちが正確に伝わっていなかったのは私の落ち度であるからだ。

父が私の意向を汲んでセッティングしている以上、安易に否とは言えない。

断ると父の顔を潰してしまう可能性もあるため、拒絶したい場合にはそれ相応のしっかりとした理由が必要である。

だが、私には正当性のある明確な理由がなかった。

 ……それに要さんへの想いに決別するいい機会かもしれない。

失恋が確定している恋は不毛だ。

しかも近い将来に好きな人の恋人になるだろう女性は、私が親しくしている職場の先輩なのだ。

早めに吹っ切らないと苦しいだけなのは予想がつく。

お見合いだろうとなんだろうと、他の男性にとりあえず目を向けてみるというのも意外と効果的かもしれない。

やや自暴自棄になりながら、「もうどうにでもなれ!」と投げやりな気持ちで私は父へ了承の旨を伝えたのだった。


< 157 / 204 >

この作品をシェア

pagetop