訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「来栖さん、期待通りの率直な感想をありがとう。おかげで分かった。俺には恋愛小説は無理だってことが。潔く撤退することにするよ」

「え、それでいいんですか!?」

まさか私の綴った感想がそんな大事な決断の材料になるとは思わず、私は目を丸くした。

だけど、葉山さんは何か吹っ切れたのか、その表情は晴れ晴れと明るい。

「もともと自分でも恋愛小説は向いてないだろうなぁって分かってたから。ただまぁ、ちょっとスランプだったのもあって、気分転換に全然違うジャンルに手を出してみようかなって思って。その結果がこのボロクソ具合なわけだけど」

はははと笑う葉山さんに悲壮感は見受けられない。

たぶん本当に言葉通り、自分の向き不向きを改めて冷静に認識した上での撤退宣言なのだろう。

 ……ていうか、この人、プロだって言ってたけど普段はどんな小説書いてるんだろ?

今になって俄かに気になってきた。

実は前回会った後に『葉山要』で一応ネット検索してみたのだがヒットしなかったのだ。


「ちなみに葉山さんって、普段はどんなジャンルの小説書いてるんですか?」

「あれ? 言ってなかったっけ? 俺の専門はミステリー小説なんだ」

「ミステリー?」

「そう。代表作は『真夏の陽炎』っていう小説なんだけど」

「『真夏の陽炎』……? えっ! それって前にドラマ化されてた!?」


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