訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「それは来栖さんの言う通りだと俺も思う。だから来栖さんには実際に俺と恋人のように過ごしてもらって、その際に都度気づいた改善点を教えて欲しいんだけどどう?」

それはつまり、恋人ごっこをして欲しいということだろう。

 ……う~ん、どうしよっかな。下心があって言ってるんじゃないっていうのは分かるからなぁ。


ここまで話していて、葉山さんが真剣に悩んでいるらしいことはヒシヒシと伝わってきた。

それゆえ無碍には断りづらい。

しばし考えた後、私は引き受けるにあたりある条件を付けることにした。

「分かりました。どうしてもっていうことなら引き受けるのはやぶさかじゃないです。た・だ・し、条件があります!」

「条件?」

「そうです。私の貴重な時間を割くわけですから見返りがないと割に合いません。私、なんでもホイホイ簡単に引き受ける、そんな安い女じゃないんで」

私がビシッとそう宣言すると、葉山さんは思わずといった風にプフッと吹き出した。

眼鏡の下の瞳にうっすらと涙が滲んでいる。


「ははっ、確かにその通りだ。分かった、貴重な時間を貰うわけだから、見返りとしてそのぶん金銭的な報酬を払おうか?」

「それは辞退します。恋愛コンサルのプロではないんで。他の見返り希望です」

「じゃあ花山粧のサイン入り初版本とかは? そこそこ価値あるモノだよ」

「即転売しますけどオッケーですか?」

< 47 / 204 >

この作品をシェア

pagetop