訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「それはちょっと悲しいかな……」

「ていうか、いくら売れっ子だからって、見返りとして自分で自分のサイン本を提示するのはちょっとイタいですよ?」

「……はい。ご指摘ありがとうございます」


条件交渉の段階から私はさっそく葉山さんの言動で気になった点を鋭く指摘した。

たぶんこんな感じで都度指摘して欲しいのだろう。

葉山さんは素直に受け入れ、頷いている。

そんな様子を見ていて、私はふといいアイディアが閃いた。

「よし、決めました! 見返りとして、葉山さんには何か一つ私の望みを叶えてもらいます。それが恋愛コンサルを引き受ける条件です」

「来栖さんの望みを叶える? 具体的には何を?」

「ふふふふ、私の望みを見極めること、それを葉山さんへの課題とします。女心を理解する訓練の一環というわけです」

「へぇ、なるほど! 確かに合理的かつ実践的だね」

「まぁ卒業試験的な課題とするんで、今すぐじゃなくて大丈夫です。この条件でどうですか?」

「分かった。いずれ来栖さんの望みを一つ叶えるってことを条件にお願いするよ」

私達は条件の合意に伴い、どちらからともなく手を差し出し、握手を交わす。

まるで国際会議にて条約が締結された時に、各国代表者同士が握手をするシーンのようだ。

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