訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「そうなんですか。確かにゆっくり話せるし、変に緊張しないしいいとは思いますよ。ただ一般的に女性ウケするかといえば、デートでは嫌って言う人は多いと思います。まぁ私は別に嫌いじゃないですけどね」


話しながら、私は焼き鳥の盛り合わせの中からねぎま串を頬張り、冷えたビールをゴクゴクと飲み干す。

仕事終わりの一杯はたまらない。

速攻でおかわりを注文して、再びビールジョッキに口をつけた。

 ……よくよく考えたら、こういう店、久しぶりに来たなぁ。

CAの同僚達と一緒に出掛ける時は、オシャレに敏感な人が多いから、それこそデートにぴったりな雰囲気の良いお店を選ぶ。

男性と食事に行くにしても、愛され女子を作っている私を連れて大衆居酒屋に行こうとする人はいない。

ムードたっぷりなお店で、小洒落た料理やドリンクをゆったりと愉しみ、あわよくばこの後ホテルへ……を狙う男ばかりだ。

 ……なんか大衆居酒屋いいかも。めっちゃ楽。

肩肘張らずリラックスできるというのは葉山さんの言う通りかもしれない。

お高いワインや洒落たカクテルを雰囲気に合わせてゆっくり嗜むよりも、キンキンに冷えたビールを勢いよくゴクゴク飲む方が最高に爽快だ。

食事も、彩りや盛り付けに感嘆しながらゆったり愉しむよりも、ボリューム満天なジャンキーフードをガツガツ貪る方が「食べた!」って感じがする。

飲んだり食べたりしているうちに、だんだん女心とかもうどうでも良くなってきた。


「大衆居酒屋、最高~!」

気づけば、3杯目のビールをプハッと飲み干した私は思わず笑顔でそう口走っていた。


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