お父さんが魔導士だなんて、聞いてない!
第一章
 私にお父さんがいないと意識したのは、幼稚園に通い始めた頃だと思う。そして、その父が日本人ではないだろうとわかったのもそのとき。
 お母さんと二人きりの生活では意識していなかったけれど、他の子たちと一緒になれば、嫌でも比較される。
 その結果、光が当たると灰色に見える黒い髪も、緑がかった艶色の瞳も、日本人にしては珍しい色というのがわかった。
 それをお母さんに指摘すれば「お父さんの血かな」と笑っていたけれど、お父さんについては教えてくれなかった。だから私は、お父さんの名前もどんな人なのかも、まったくわからない。生きているのか、死んでいるのかさえも。
 子どもというのは時に残酷で、私の見た目をからかいの対象にした挙げ句、見た目が違うから仲間ではないと決めつけることもあった。
 だけど今は、そういった差別をなくそう教育が進んでいるから「みんなで仲良く」「見た目で判断しない」と、担任が根強く指導してくれたおかげで、幼稚園では大きな問題にならなかった。
 それでも知識がついてくると厄介なことが起こる。先生にバレなければいいと、先生の目を盗んで私にいたずらをし始める。ちょっと身体を押したりとか蹴ったりとか。
 始めのうちは気にしていなかったけれど、ある日、突然、学校に行けなくなった。
 お腹が痛い、頭が痛い、気持ち悪い。
 朝起きて、ご飯を食べるまでは普通。だけど、登校時間が近づくと、気持ち悪くなってお腹が痛くなる。
 お母さんも、すぐにわかったんだと思う。
 これが風邪を引いたとか、胃腸炎になったとか、そういった種類の不調とは違うことを。
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