魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
「ランスロット……」
「なんですか?」

 アルフォンスは、ランスロットに魔法石を手渡した。

「ご自分でお渡ししたらいかがですか?」
「早く渡してきてくれ。」

「しょうがないですねぇ。」

 ランスロットはてくてくと廊下を進み、セレーヌの部屋へ向かった。廊下と天井が見たこともないほどに輝いている。しばし呆然としていると、苦しそうに息をしながら廊下に座り込むセレーヌの姿が見えて、慌てて駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」
「ランスロットさん……すみません……床と天井だけしかできなくて……」
「陛下からこちらを預かりました。握ってください。魔力が回復します。」

 セレーヌの手に魔法石を握らせると、呼吸が落ち着いていった。

「ありがとうございます。すごく楽になりました。」
「この城は陛下の魔力で溢れています。少しずつで構いませんよ。」

 数日後──

「ランスロット……」
「え?今日は魔法石じゃないんですか?」

 アルフォンスから手渡されたのは紅茶の葉だった。ランスロットはちらりとアルフォンスを見た。

「陛下が淹れて差し上げればいいじゃないですか。お掃除の後のひとときをご夫婦で過ごされるのもよろしいかと思いますよ?」

 アルフォンスは無視して書類を読んでいる。

「恥ずかしがり屋さんなんだから~」

 ランスロットは茶葉を持って執務室を出た。アルフォンスから渡された紅茶には、疲労回復の効果がある。アルフォンスは城の掃除をするセレーヌを気にしている。アルフォンスが女性の心配をするなんて前代未聞だ。

「本当に皇妃様が誕生しちゃうかもしれませんね。はははは。」

 ランスロットはスキップしながら廊下を進んだ。
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