魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
「お母様!」
「あら、もうお話は終わったの?」

「ランスロットさんが陛下に伝言があるからって、私とお父様は部屋を出たの。」
「ランスロット様と陛下がお2人でお話を?」
「うん。」

 ナターシャは、客間がある方角を見つめた。

「お母様、これもステファン様の魔力の影響?」
「そうよ。でも気にしないで。セレーヌには関係ないことよ。」

 大きな噴水のある庭園から少し離れた場所にある広場には、至るところに穴が開いている。庭園にも何人かの魔力使いがいて、壊れた花壇を直していた。

「だけど、何もしないなんて……」
「ランスロット様から何か言われなかった?魔力を使わないようにとか。」

「どうしてわかるの?」
「今のセレーヌは魔力を使おうとしても使えないわよ。強制的に止められている。」
「もしかしてこの魔法石の力?」

 母は静かにうなずいた。

「皇帝陛下があなたを守ってくれているのね。」
「どういうこと?」
「さぁ、どういうことかしらね。」

 なんだかドキドキしてきた。このドキドキはなんだろうか。

「魔力を使って修復はできないけど、自力でやるなら平気よ。やってみない?」
「うん!」

 私は母からスコップを受け取った。

「ヴァルドラードの生活はどう?楽しい?」
「すごく楽しいわ。初めて行ったときは真っ暗で怖かったけど、掃除をしたらお城の中がキラキラするようになったの!」

「皇帝陛下の魔力はお強いでしょうから、お城で魔力を使うのは大変じゃない?」
「そうなの!初めて掃除をしたときは床と天井を掃除しただけで倒れてしまったわ。お母様くらい魔力があったらいいのにって思ったもの。」

「お城の魔力には、主の魔力が反映しているの。慣れが必要なのよ。」
「毎日掃除して、ちょっとずつ慣れてきた気がするわ。今は長く魔力を使っても平気だし。」

「魔法石はいつも頂いているの?」
「えぇ。魔法石を頂いたいり、いろんな香りの紅茶をランスロットさんが淹れてくれて……」
「気にかけてくださっているのね。」
「……そうかな。」

 あらためて考えると色々気を遣われているかもしれない。なんとなく顔が熱い気がしてきた。

「今日は魔力でできた馬車で来たのよ。皇帝陛下が魔力で造ってるの。すごいと思わない?」
「空を飛ぶ馬車でしょう?ランスロットさんが家に来た時に見たわ。後でクッキーを持ってきてあげるわね。ちょっとは魔力の足しになるかもしれないから。」
「ありがとう!」

 皇帝陛下がどのような人物なのか不安はあったけれど、今のセレーヌはとても楽しそうだ。嬉しそうにヴァルドラードのことを話すセレーヌを見てナターシャは微笑んだ。
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