魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
鳴き声が気になって森の中へ入ったものの、声の主がどこにいるのかわからない。耳を澄ませても、木々のざわめきしか聞こえて来ない。諦めかけたその時、森の奥から声が聞こえてきた。
「待ってろ、マリウス!すぐ助けてやるからな!」
声のする方へ駆けていくと、大きな狼のような動物が必死に木を押し退けようとしている。よく見ると、倒木の下に挟まって動けなくなっている小さな犬のような動物がいた。
「あっ!」
思わず声を上げると、大きな狼がこちらを向いた。後ろ姿は狼のようだけど、あれは狼なんかではない。魔獣だ。あんな大きな魔獣に襲われたらひとたまりもない。慌てて逃げようとすると──
「お待ちください!」
人の声がして思わず振り返ったが、そこにいるのはやはり大きな魔獣だけ。
「この子を助けたいんです!手伝っていただけませんか?」
大きな魔獣から人間の声がする。訳がわからず目を瞬かせているうちに、言葉が体の中に降りてきた。今は苦しんでいる小さな魔獣を助けることが先決だ。
「わかりました、手伝います!」
大きな魔獣が倒木を押し上げている隙に、小さな魔獣の体を引き抜いた。腕の中に収まるほどの小さな犬のような動物は、目を閉じて動かない。魔力を放つと、小さな動物はうっすらと目を開けた。
「よかった……」
小さな魔獣は大きな瞳をぱちぱちさせてこちらを見つめてくる。頭を撫でると嬉しそうに体を擦り寄せてきた。
「治癒の魔力をお使いになられるのですね!助かりました。ありがとうございます!」
どうしてこの魔獣は言葉を話すのだろうか。視線を彷徨わせていると、大きな魔獣は姿勢を正して私の側に座った。
「私は皇帝陛下の側近、ロシュフォールと言います。この森を守る役目を仰せつかっております。」
「陛下の側近だったのですね。」
「失礼ですが、あなたは……?」
「セレーヌ・ブランシェールと申します。少し前にエルバトリアからヴァルドラードへ来たばかりで……」
「ブランシェール!?エルバトリアにある魔力使いの名家ではありませんか!どうりで素晴らしい魔力をお持ちなわけだ!」
そんなことまで知っているのか。皇帝陛下の側近とはいえ、魔獣なのに詳しすぎる。膝の上で体を丸めている小さな魔獣を撫でていると、森の木がざわざわと揺れ出した。
「マリウス、父上のところへ戻るんだ。」
ロシュフォールの声を聞いて小さな魔獣は森の中へ駆けて行った。森に吹く風が徐々に強くなっていく。風と共に漂ってきたのは、息苦しくなるほどの魔力──皇帝陛下の魔力だった。
「待ってろ、マリウス!すぐ助けてやるからな!」
声のする方へ駆けていくと、大きな狼のような動物が必死に木を押し退けようとしている。よく見ると、倒木の下に挟まって動けなくなっている小さな犬のような動物がいた。
「あっ!」
思わず声を上げると、大きな狼がこちらを向いた。後ろ姿は狼のようだけど、あれは狼なんかではない。魔獣だ。あんな大きな魔獣に襲われたらひとたまりもない。慌てて逃げようとすると──
「お待ちください!」
人の声がして思わず振り返ったが、そこにいるのはやはり大きな魔獣だけ。
「この子を助けたいんです!手伝っていただけませんか?」
大きな魔獣から人間の声がする。訳がわからず目を瞬かせているうちに、言葉が体の中に降りてきた。今は苦しんでいる小さな魔獣を助けることが先決だ。
「わかりました、手伝います!」
大きな魔獣が倒木を押し上げている隙に、小さな魔獣の体を引き抜いた。腕の中に収まるほどの小さな犬のような動物は、目を閉じて動かない。魔力を放つと、小さな動物はうっすらと目を開けた。
「よかった……」
小さな魔獣は大きな瞳をぱちぱちさせてこちらを見つめてくる。頭を撫でると嬉しそうに体を擦り寄せてきた。
「治癒の魔力をお使いになられるのですね!助かりました。ありがとうございます!」
どうしてこの魔獣は言葉を話すのだろうか。視線を彷徨わせていると、大きな魔獣は姿勢を正して私の側に座った。
「私は皇帝陛下の側近、ロシュフォールと言います。この森を守る役目を仰せつかっております。」
「陛下の側近だったのですね。」
「失礼ですが、あなたは……?」
「セレーヌ・ブランシェールと申します。少し前にエルバトリアからヴァルドラードへ来たばかりで……」
「ブランシェール!?エルバトリアにある魔力使いの名家ではありませんか!どうりで素晴らしい魔力をお持ちなわけだ!」
そんなことまで知っているのか。皇帝陛下の側近とはいえ、魔獣なのに詳しすぎる。膝の上で体を丸めている小さな魔獣を撫でていると、森の木がざわざわと揺れ出した。
「マリウス、父上のところへ戻るんだ。」
ロシュフォールの声を聞いて小さな魔獣は森の中へ駆けて行った。森に吹く風が徐々に強くなっていく。風と共に漂ってきたのは、息苦しくなるほどの魔力──皇帝陛下の魔力だった。