魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
寝ていたはずのロシュフォールは飛び起きて、森の奥をじっと見つめている。
「セレーヌ様、城へ戻りましょう。」
「どうして?陛下は?」
「陛下が戻るようにと仰っておられます。」
「そんなことがわかるの?」
「長く一緒におりますので。」
歩き出したロシュフォールを私は慌てて追った。その間も地鳴りは続いている。風が徐々に強くなってきて木々を揺らし、魔力の気配が漂ってくる。
「この音、前も聞こえてたわよね?何が起きてるの?」
「あとで陛下からお聞きになってください。」
ロシュフォールは私を森や泉から遠ざけようとしているのか。
「聖なる泉で何か起きてるいるのよね?これはルシアの魔力でしょう?」
森に漂っている不思議な魔力は、皇帝陛下のものとは違う。
「ルシアのところへ案内して。ルシアは女性と話したいと言ってるの。私が行けばおさまるかもしれないわ。」
「それはできません。」
「どうして?ルシアと話すことが私の役目なのよ?」
「陛下は、セレーヌ様がルシアと会うことを望んでおりません。」
それはわかるけど、今日はずっと地鳴りが続いている。どう考えてもおかしい。
「ルシアが悪の精霊になった理由がわからなければ、ロシュフォールたちを元に戻すことはできない。私なら聞き出せるわ。ルシアが呼んでるんだから。」
「セレーヌ様には傷ついて欲しくないんです。マリウスを命がけで救って頂いた時、思い出したんです。私は、陛下を苦しめ続けている。それなのに、陛下が大切に思うセレーヌ様まで苦しめるなんて……!」
「ロシュフォールが陛下を苦しめるなんてことない。魔獣に変わったのはあなたのせいじゃないのよ?」
ロシュフォールは足を止めてゆっくり振り返った。
「魔獣に変えられても当初は楽観的に考えていたんです。時間が経てば解決するのではないかと。ですが、ある時陛下の手に不自然な傷があるのを見てしまいました。昔からお強い方で、怪我をしたところなんて見たことがなかった。それに、城にはランスロットがいるはずです。怪我をしたら治せるはずなのに……すごく動揺しました。」
治癒の魔力でも治せない怪我はある。喧嘩に巻き込まれた小さな魔獣のように、怪我が深すぎる場合と、難易度の高い魔力を習得するときにできる傷。習得する魔力の難易度が上がると、その反動で身体への負担が大きくなっていく。最悪の場合、命を落としてしまうこともある。
「陛下は我々を助けるために難易度の高い魔力を習得されていました。側近として陛下をお支えしなければならないのに、陛下を苦しめていたんです。」
「そんなことないわ。ロシュフォールは魔獣に変わっても言葉を話せている。それは陛下にとって希望を与えているはずです。それに、陛下はあなたたちを助けることを苦しいなんて思っていないと思います。私も同じ立場ならそうしたと思いますから。」
「セレーヌ様……」
「ロシュフォールを元に戻すことは、陛下が誰よりも望んでいます。私をルシアのところへ連れて行ってください。」
すると下から突き上げるような地響きがして、ザザーッという噴水のような音がどこからか聞こえてきた。
「ロシュフォール、泉へ行きましょう!」
踵を返すと、ロシュフォールが前に立ちはだかった。
「ルシアの魔力はとても強い。陛下の魔力でも封印するのもやっとなほどなんですよ!?」
「陛下はそのルシアと対峙しています。」
私の声を聞いてロシュフォールは言葉に詰まった。
「ルシアを封印するとき、陛下は魔力を放出して倒れてしまったのですよね?ロシュフォールとランスロットさんが魔力を与えたから陛下は魔力を失わずに済んだ。今も同じことが起きていたらどうするのですか?陛下の側近として、見過ごせるの?陛下のところへ行かなかったことを後悔しない?」
ロシュフォールは私の顔をじっと見つめた後、くるりと背を向けた。
「私は陛下の側近。陛下をお守りすることが役目です。乗ってください、セレーヌ様!」
ロシュフォールの背中に乗ると、ロシュフォールは一目散に森の中を駆け抜けた。森の中の魔力は気味が悪いほど歪んでいる。ルシアと話ができるのかわからない。怖くないと言えば嘘になる。
(でも、行かないと……!)
私はまっすぐ前を向いて、暗い道の先を見つめた。
「セレーヌ様、城へ戻りましょう。」
「どうして?陛下は?」
「陛下が戻るようにと仰っておられます。」
「そんなことがわかるの?」
「長く一緒におりますので。」
歩き出したロシュフォールを私は慌てて追った。その間も地鳴りは続いている。風が徐々に強くなってきて木々を揺らし、魔力の気配が漂ってくる。
「この音、前も聞こえてたわよね?何が起きてるの?」
「あとで陛下からお聞きになってください。」
ロシュフォールは私を森や泉から遠ざけようとしているのか。
「聖なる泉で何か起きてるいるのよね?これはルシアの魔力でしょう?」
森に漂っている不思議な魔力は、皇帝陛下のものとは違う。
「ルシアのところへ案内して。ルシアは女性と話したいと言ってるの。私が行けばおさまるかもしれないわ。」
「それはできません。」
「どうして?ルシアと話すことが私の役目なのよ?」
「陛下は、セレーヌ様がルシアと会うことを望んでおりません。」
それはわかるけど、今日はずっと地鳴りが続いている。どう考えてもおかしい。
「ルシアが悪の精霊になった理由がわからなければ、ロシュフォールたちを元に戻すことはできない。私なら聞き出せるわ。ルシアが呼んでるんだから。」
「セレーヌ様には傷ついて欲しくないんです。マリウスを命がけで救って頂いた時、思い出したんです。私は、陛下を苦しめ続けている。それなのに、陛下が大切に思うセレーヌ様まで苦しめるなんて……!」
「ロシュフォールが陛下を苦しめるなんてことない。魔獣に変わったのはあなたのせいじゃないのよ?」
ロシュフォールは足を止めてゆっくり振り返った。
「魔獣に変えられても当初は楽観的に考えていたんです。時間が経てば解決するのではないかと。ですが、ある時陛下の手に不自然な傷があるのを見てしまいました。昔からお強い方で、怪我をしたところなんて見たことがなかった。それに、城にはランスロットがいるはずです。怪我をしたら治せるはずなのに……すごく動揺しました。」
治癒の魔力でも治せない怪我はある。喧嘩に巻き込まれた小さな魔獣のように、怪我が深すぎる場合と、難易度の高い魔力を習得するときにできる傷。習得する魔力の難易度が上がると、その反動で身体への負担が大きくなっていく。最悪の場合、命を落としてしまうこともある。
「陛下は我々を助けるために難易度の高い魔力を習得されていました。側近として陛下をお支えしなければならないのに、陛下を苦しめていたんです。」
「そんなことないわ。ロシュフォールは魔獣に変わっても言葉を話せている。それは陛下にとって希望を与えているはずです。それに、陛下はあなたたちを助けることを苦しいなんて思っていないと思います。私も同じ立場ならそうしたと思いますから。」
「セレーヌ様……」
「ロシュフォールを元に戻すことは、陛下が誰よりも望んでいます。私をルシアのところへ連れて行ってください。」
すると下から突き上げるような地響きがして、ザザーッという噴水のような音がどこからか聞こえてきた。
「ロシュフォール、泉へ行きましょう!」
踵を返すと、ロシュフォールが前に立ちはだかった。
「ルシアの魔力はとても強い。陛下の魔力でも封印するのもやっとなほどなんですよ!?」
「陛下はそのルシアと対峙しています。」
私の声を聞いてロシュフォールは言葉に詰まった。
「ルシアを封印するとき、陛下は魔力を放出して倒れてしまったのですよね?ロシュフォールとランスロットさんが魔力を与えたから陛下は魔力を失わずに済んだ。今も同じことが起きていたらどうするのですか?陛下の側近として、見過ごせるの?陛下のところへ行かなかったことを後悔しない?」
ロシュフォールは私の顔をじっと見つめた後、くるりと背を向けた。
「私は陛下の側近。陛下をお守りすることが役目です。乗ってください、セレーヌ様!」
ロシュフォールの背中に乗ると、ロシュフォールは一目散に森の中を駆け抜けた。森の中の魔力は気味が悪いほど歪んでいる。ルシアと話ができるのかわからない。怖くないと言えば嘘になる。
(でも、行かないと……!)
私はまっすぐ前を向いて、暗い道の先を見つめた。