魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
「皇帝陛下って、どんな人なんだろう……怖い人じゃないといいな……」
私はベッドに入って星空を眺めていた。今日はいろんなことがあり過ぎて眠れない。
「それにしてもお母様は……ふふっ。」
私は母の言葉を思い出して笑った。
「婚約を破棄された日にランスロット様が声をかけてくださったというのは、セレーヌの魔力がエルバトリアなんかでは収まらないということなのよ。絶対にそうよ!だから、殿下のことはさっさと忘れなさい。」
「ありがとう、お母様。でもステファン様とは長く一緒にいたから……そう簡単に忘れることなんてできないわ。」
私が追っていたのは幼い日のステファン様の面影だった。頭の中に楽しそうに笑う幼い日のステファン様の姿が現れて消えた。
「小さい頃は素直な方だったのに、どうしてあんな風になってしまったのかしら。陛下も王妃様も殿下を放置しすぎだと思うわ。」
「ふふ、確かにそうかもしれないわね。」
「セレーヌに甘え過ぎなのよ。魔力というのは、自分が習得しなければ使えるようにならない。セレーヌがあんなに懸命にお支えしてきたのに、婚約破棄して城の魔力使いがやればいいって……どういうことなのかしら!」
窓がカタカタと揺れて外の風が強くなってきた。母の魔力の影響だ。
「お母様、落ち着いて。」
「大体、魔力が暴発するというのは本来、自分の魔力では制御できないほど強い魔力を持つ人に起こることなの。自分で魔力を制御できないから暴発するっていうのは、本人の怠慢。甘えなのよ!」
「ふふふ。お母様はステファン様のことがお好きではないのね。」
「……そんなことないわ。セレーヌの婚約者だったんだから。」
窓の外では葉っぱや花が激しく舞っている。
「もうあなたは殿下の婚約者じゃない。これからは、自分のために魔力を習得して、自分のために使いなさい。」
母が言いたい放題言うからおかげでずいぶん元気になった。シーツを引き上げると、遠くの空で風船が割れるような音がした。何かと思って見たけれど、空に星が輝いているだけだった。
「お父様だわ……!」
遠くから馬が走ってくるのが見えて、私はベッドを降りてガウンを羽織った。
(きっと驚くだろうな。)
母からヴァルドラードへ行く話を聞いた父の顔を想像すると顔が緩んでしまう。部屋を出て廊下を進んでいくと、花瓶に飾られている赤い薔薇が目に入った。
(これからは自分のために魔力を使える。自分のために、自分の好きなように……)
そう思って赤い薔薇へ向かって魔力を放った。しかし何も変わらない。
「?」
もう一度魔力を放っても、赤い薔薇は何事もなかったかのように咲いている。
「どうして……?」
私は何度も魔力を放った。それでも赤い薔薇は赤いまま。
「どうして変わらないの!?」
心臓が痛い程に鼓動して手が震えている。薔薇の色を変える魔力は、習得してから一度も失敗したことがなかった。
魔力が消えてしまった──
そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。
私はベッドに入って星空を眺めていた。今日はいろんなことがあり過ぎて眠れない。
「それにしてもお母様は……ふふっ。」
私は母の言葉を思い出して笑った。
「婚約を破棄された日にランスロット様が声をかけてくださったというのは、セレーヌの魔力がエルバトリアなんかでは収まらないということなのよ。絶対にそうよ!だから、殿下のことはさっさと忘れなさい。」
「ありがとう、お母様。でもステファン様とは長く一緒にいたから……そう簡単に忘れることなんてできないわ。」
私が追っていたのは幼い日のステファン様の面影だった。頭の中に楽しそうに笑う幼い日のステファン様の姿が現れて消えた。
「小さい頃は素直な方だったのに、どうしてあんな風になってしまったのかしら。陛下も王妃様も殿下を放置しすぎだと思うわ。」
「ふふ、確かにそうかもしれないわね。」
「セレーヌに甘え過ぎなのよ。魔力というのは、自分が習得しなければ使えるようにならない。セレーヌがあんなに懸命にお支えしてきたのに、婚約破棄して城の魔力使いがやればいいって……どういうことなのかしら!」
窓がカタカタと揺れて外の風が強くなってきた。母の魔力の影響だ。
「お母様、落ち着いて。」
「大体、魔力が暴発するというのは本来、自分の魔力では制御できないほど強い魔力を持つ人に起こることなの。自分で魔力を制御できないから暴発するっていうのは、本人の怠慢。甘えなのよ!」
「ふふふ。お母様はステファン様のことがお好きではないのね。」
「……そんなことないわ。セレーヌの婚約者だったんだから。」
窓の外では葉っぱや花が激しく舞っている。
「もうあなたは殿下の婚約者じゃない。これからは、自分のために魔力を習得して、自分のために使いなさい。」
母が言いたい放題言うからおかげでずいぶん元気になった。シーツを引き上げると、遠くの空で風船が割れるような音がした。何かと思って見たけれど、空に星が輝いているだけだった。
「お父様だわ……!」
遠くから馬が走ってくるのが見えて、私はベッドを降りてガウンを羽織った。
(きっと驚くだろうな。)
母からヴァルドラードへ行く話を聞いた父の顔を想像すると顔が緩んでしまう。部屋を出て廊下を進んでいくと、花瓶に飾られている赤い薔薇が目に入った。
(これからは自分のために魔力を使える。自分のために、自分の好きなように……)
そう思って赤い薔薇へ向かって魔力を放った。しかし何も変わらない。
「?」
もう一度魔力を放っても、赤い薔薇は何事もなかったかのように咲いている。
「どうして……?」
私は何度も魔力を放った。それでも赤い薔薇は赤いまま。
「どうして変わらないの!?」
心臓が痛い程に鼓動して手が震えている。薔薇の色を変える魔力は、習得してから一度も失敗したことがなかった。
魔力が消えてしまった──
そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。