溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
信号待ちで立ち止まると、風がふわりと髪を揺らす。
その瞬間、煌が指で前髪を整えた。
「……粉がついてました。可愛いので、ちょっともったいないですけど」
「……可愛いって言わないで」
「じゃあ、何て言えばいいんです?」
「何も言わなくていい、です」
「真白に何も言わないなんて。いつも可愛すぎて困るくらいなのに」
からかうように言って笑う声が、春の風より柔らかい。
わたしは俯いて、紙袋を握る手に力をこめた。
「……ほんと、外でそういうのやめてください」
「やめた方がいい?」
「……はい」
「嫌ですか?」
その問い方がずるい。
目が合った瞬間、逃げ場がなくなる。