溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
ベッドから立ち上がると、朝の光が頬に触れた。
昨日までと何も変わらない部屋のはずなのに、なぜか空気が少しだけ違って感じる。
鏡の前で髪をまとめながら、ふと頭の中で――
“あの光”がまた揺れた。
(……もう一度、何かを作ってみたいのかもしれない)
はっきりとした答えではない。
でも、その小さな衝動が、確かにどこかで息をしていた。
休日の昼下がり。
約束の時間より少し早く、カフェに着いた。
白い外壁に蔦が絡む小さな店から、焼き菓子の甘い香りが通りまでふわりと漂っている。
扉を押して入ると、温かい空気と同時に、かすかなバターの匂いが胸に広がった。
(……懐かしい香り)
その瞬間、胸の奥が小さく鳴った。
でも、すぐに息を整える。
今はただ、友だちとお茶をしに来ただけ――そう言い聞かせて席に向かう。
数分もしないうちに、彩花が勢いよく現れた。
「真白ー!ごめん、待った!?」
「ううん、今来たところ」