フェラーリと街を駆ける二人
3話、川辺の子犬
川辺に子供たちの元気な笑い声が響いた。 水面に石を投げ、はしゃぐ声が風に乗って広がる。 だがその中で、一匹の小さな子犬が川沿いの草むらを駆け回り、ふいに足を滑らせた。 次の瞬間、水しぶきと共に子犬の姿が消え、小さな悲鳴が響き渡る。 子どもたちは凍りつき、泣きそうな顔で川を覗き込んだ。 その時、赤と白のフェラーリが並んで停まった。 迷うことなくキラリがドアを開け、冷静な瞳のまま川へ飛び込む。 水の冷たさをものとせず、力強い腕で必死にもがく子犬を抱き上げた。 その動作には迷いがなく、まるで最初から自分の役割を知っていたかのようだった。 「大丈夫か ? 」 キラリの声は低く、しかし確かな安心感を含んでいた。 岸に上がるとすぐに、スマイルが駆け寄る。 彼女はフェラーリのトランクを開け、用意していたタオルを素早く取り出すと、震える子犬を包み込むように抱き寄せた。 「怖かったな。でももう大丈夫。ほら、暖かいでしょ。」 その優しい声と微笑みは、仔犬の小さな心を落ち着かせる魔法のようだった。 子犬の体から震えが消え、やがて小さく安堵の息をつく。 その様子を見た子供たちは声を合わせて拍手し、瞳を輝かせながら二人を見つめる。 川辺に集まっていた大人たちも次々と駆け寄り、「ありがとう」「すごいな」と口々に感謝の言葉を伝えた。 街の空気が一瞬で変わり、温かな連帯感が生まれていく。 赤と白のフェラーリと共に現れる二人は、もはや偶然の救いの手ではなく、この街に必要とされる存在となりつつあった。 キラリとスマイルは、互いに短く視線を交わし、何も言わずにうなずき合う。 子犬を安心させたその手には、言葉以上の信頼が宿っていた。 エンジンが再び低く唸り上げると、人々は自然と道を開ける。 今日もまた、赤と白の光が街を駆け抜けていくのだった。
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