【十六夜月のラブレター another side】イケメンエリート営業部員入谷柊哉くんは拗らせすぎてる
「月見ちゃんと一緒だったの?」

「うん。今同じ会社で働いてるんだ」

「大阪から東京に異動になったんだよね。木村先輩から聞いて」

「木村とまだ繋がってたんだ」

「たまにみんなでご飯食べに行ったり。これからは先輩も一緒に行けるね」

「次は俺も誘って」

「やっぱり先輩、今もすごくカッコイイ」

「そう? 雪見ちゃんはもっとかわいくなってるね」

「ほんと!? 嬉しい」

こぼれるような笑みで俺をまっすぐに見て喜んでくれる。

見つめてもすぐに視線を逸らしたり顔を背ける彼女とは全く違う。

「ゆっくり会いたいな。今度の週末とかはどう?」

「週末かあ……」

彼女とお好み焼きパーティーのお仕置きデートの約束をしたばかりだ。

でもその前に。

抱いてしまった疑惑を解決する方が先決かもしれない。

もしその疑惑通りなら、俺は躊躇なく彼女に告白する。

「だめ?」

縋るような瞳で雪見ちゃんに見つめられる。

この誘いを断れる男はいないだろう。やっぱりかわいい。

そして彼女に似ている。

彼女もこうやって俺に縋りついてくれればいいのに。

「うん、いいよ」

「よかった! じゃあ連絡先教えて」

お互いのスマホで連絡先交換をしたあと雪見ちゃんに尋ねた。

「こんな時間に何か急な用があったの?」

「え? あ、うん。ちょっと話したいことがあって」

それ以上は言いたくなさそうだ。

「そっか。じゃあ俺行くわ。また週末な」

「うん。またね」

無邪気に手を振る雪見ちゃんに微笑んだあと、俺は駅への道を歩いた。

雪見ちゃんは彼女に何の話をしに来たのだろう?
 
俺が大阪から東京へ来たことを知って来たのでは?

抱いた疑惑が膨張していく。

どちらにしても、彼女の部屋に行けなかったのは残念だった。

せっかく縮まったと思った距離が、また開いていく……。
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