【十六夜月のラブレター another side】イケメンエリート営業部員入谷柊哉くんは拗らせすぎてる
「あたしも昔の話していい? あたしが柊哉先輩に告白したの、憶えてる?」

「もちろん」

「その数日後、先輩はあたしにも仲の良かった友達にも誰にも何も告げずに突然大阪に引っ越してしまった」

「ごめんね。俺も急に親から聞いて心の整理ができてなかったから」

「あの時、先輩はあたしに好きな人がいるって言ってた。その人とはどうなったの?」

「とっくの昔にフラれたよ」

「……今は彼女とかいないの?」

「いないよ」

「……じゃあ、もしあたしが、今も好きって言ったら、付き合ってくれる?」

「……ごめん。今も好きな人がいるんだ」

「……それって前と同じ人?」

「……うん」

「フラれたんじゃないの?」

「そうなんだけどね」

「柊哉先輩はかっこよくて頭も良くてすごいモテて。それなのに、そんな先輩を振るその人ってどんな人? そんなにかわいいの? そんなに素敵なの? その人の何がそんなに好きなの?」

「……俺ももう、拗らせすぎててわかんない」

本当は、拗らせすぎてて全部好き。

「あたしじゃ、ダメ?」

泣きそうな顔の雪見ちゃんに大きな瞳で見つめられる。

「ごめん。それにせっかく会えたけどこれで最後になると思う。俺、また大阪に戻るから」

「えっ? 東京に来たばかりなのに?」

「大阪の本社の営業本部長に戻ってこいって言われててさ。その人にはお世話になってるし。東京にももう用がないから」

「あたし、先輩にフラれるの今日で2回目だね」

「ごめんね……」

「いいの。あたしじゃダメってよくわかったから……ううん、本当はもっとずっと前にわかっていたのにあたし……先輩がその好きな人とうまくいくのがどうしても、怖かった」

「雪見ちゃん……?」

「帰るね」

椅子から立ち上がった雪見ちゃんは泣いていた。
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