【十六夜月のラブレター another side】イケメンエリート営業部員入谷柊哉くんは拗らせすぎてる
「送ってくよ」
「いい。あたし、もう柊哉先輩のことは本当に忘れるね。それじゃ……」
涙を流したまま雪見ちゃんは出て行った。
追いかけることはしなかった。
あの時彼女に雪見ちゃんと付き合うと言ったのは、ただの当て付けだったから。
最初から誰とも付き合う気なんてなかった。
一人でバーを出る。
まだ飲み足りなくて、コンビニで缶ビールの6本パックを買って帰宅した。
テーブルの椅子に座って缶ビールを一気に飲む。
こういう時、母親譲りの自分の酒の強さが嫌になる。すぐに酔って何もかも忘れてしまえればいいのに。
向かいのはじめて彼女がここに来た時に座った空の椅子を見る。
ここで彼女の頭をぽんぽんしたなあ。
一緒に荷解きしたり、壁ドンみたいなことをしたり……。
この部屋に棲み付く亡霊のように、彼女が思い出されて切なくなる。
もうあんな時間は二度と来ない。
でも俺の「好き」は、「嫌い」にならなかった。
なんだよ、「好き」なんていう感情、信じてなかったのに。
嫌いになりたいのに、嫌いになれない。
嫌いになるどころか、もっと彼女が好きだと思うだけ。
倒れたビールの空缶がテーブルの上を転がっていく。
止めることもせずにぼんやり見ていると、インターフォンが鳴った。
誰だ? こんな時間に。もう22時過ぎてるぞ。
椅子から立ち上がりインターフォンのカメラを見る。
映っているのは彼女だった。
「いい。あたし、もう柊哉先輩のことは本当に忘れるね。それじゃ……」
涙を流したまま雪見ちゃんは出て行った。
追いかけることはしなかった。
あの時彼女に雪見ちゃんと付き合うと言ったのは、ただの当て付けだったから。
最初から誰とも付き合う気なんてなかった。
一人でバーを出る。
まだ飲み足りなくて、コンビニで缶ビールの6本パックを買って帰宅した。
テーブルの椅子に座って缶ビールを一気に飲む。
こういう時、母親譲りの自分の酒の強さが嫌になる。すぐに酔って何もかも忘れてしまえればいいのに。
向かいのはじめて彼女がここに来た時に座った空の椅子を見る。
ここで彼女の頭をぽんぽんしたなあ。
一緒に荷解きしたり、壁ドンみたいなことをしたり……。
この部屋に棲み付く亡霊のように、彼女が思い出されて切なくなる。
もうあんな時間は二度と来ない。
でも俺の「好き」は、「嫌い」にならなかった。
なんだよ、「好き」なんていう感情、信じてなかったのに。
嫌いになりたいのに、嫌いになれない。
嫌いになるどころか、もっと彼女が好きだと思うだけ。
倒れたビールの空缶がテーブルの上を転がっていく。
止めることもせずにぼんやり見ていると、インターフォンが鳴った。
誰だ? こんな時間に。もう22時過ぎてるぞ。
椅子から立ち上がりインターフォンのカメラを見る。
映っているのは彼女だった。