【十六夜月のラブレター another side】イケメンエリート営業部員入谷柊哉くんは拗らせすぎてる
シャワーを浴びて部屋着に着替える。

ネットで購入した北欧風の4人掛けのダイニングテーブルに座り、パソコンを使ってプレゼンの配布資料の最終作業をする。

明日の夜は彼女との飲み会のためだけに時間を使いたいから今日中に済ませておこう。

このプレゼンは大阪本社にいた時から準備していた大きな案件で、異動していなくても東京に出張して担当する予定だった。

配布資料を完成させてUSBメモリに保存すると、ソファーに寝転んで今日一日のことを振り返る。

まさか彼女が俺のことを憶えていなかったなんて。

あんなにドキドキして夢見た再会だったのに。

一番最悪なパターンだが落ち込んでいる暇はない。

10年以上会っていないし、顔も体格だって変わっているんだから思い出せなくても当然だっ。

でも彼女が思い出すまでは自分から話すのはやめよう。

それでも思い出してくれなかったら、さすがにピエロすぎるから。

今日彼女の顔を近くでまっすぐに見つめた時、あの頃に戻ったようにドキドキした。

それがすべての答えだ。これからどうするべきかの。

彼女が投資の損益を抱えていたのはラッキーだった。ご褒美の提案をしたら急に乗り気になったから。

本当はいつでもアドバイスぐらいしてあげるけど、会ってくれる切り札になるならまだ残しておこう。

勝負は明日の夜。

いや、あまり焦って追いかけると逃げられるかも。

冷静に接すると戒めながらも俺は、彼女に会える悦びで心が躍るのを抑えることができなかった。
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