【十六夜月のラブレター another side】イケメンエリート営業部員入谷柊哉くんは拗らせすぎてる
夜は柴田さんに誘われた飲み会に参加した。

参加メンバーは柴田さん、入社2年目の前川さんなど女性社員数名と、佐藤をはじめとする営業2課の後輩の男性社員数名だ。

彼女は自分でも言っていたようにいなかった。

俺がわざわざ大阪本社から東京支社に異動してきた目的は彼女に会うためだ。

彼女の情報収集ができればと思ったが、彼女の話題は一切出てこなかった。

きっと彼女は今でも誰とも関わろうとしていないのだろう。

逆にそれが彼女っぽくていい。

あの頃、俺にとって彼女は手の届かない夜空に輝く満月のような存在だったから。

酒も入ってきて女子社員たちが一層キラキラした目で俺を見てくる。

おそらく柴田さんと前川さんが男性社員に人気の女子社員なのだろう。美人だしスタイルも良くて愛想もいい。

きっとこの二人を目当てにこの飲み会に参加している奴もいるはず。

でも俺が興味あるのは彼女だけだ。他の女子社員に気があるとか変な誤解はされたくない。

飲み会が終わると二次会には行かず引っ越したばかりのマンションに帰った。

さすがに異動1日目で疲れたし、明々後日に迫っているプレゼンの配布資料の最終チェックもしたかったから。

引っ越し先は高校生の時から投資で儲けた金で、築年数の浅い家賃も割と高めのマンションを選んだ。

2LDK分の広さを1LDKの間取りにした広いリビング。

天井からは備え付けのペンダントライトが幾つも吊り下げられている。

ブラインドの窓の前には観葉植物を置いた。

ゴールデンウイークに引っ越してきたばかりだから、まだ段ボール箱が山のように積み上がっている。
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