メリーでハッピーなトゥルーエンドを
「だから……わたしが死ぬ必要があったんだ。だから、柊先輩と真白先輩はわたしを殺そうと」
合点がいってそう口にすると、彼は意外そうな表情をした。
「真白さんのことももう分かってたんだ。もしかして、殺されたって覚えてた?」
「一度は……死んだせいで忘れましたけど。でも、御影がいるから」
そう言うと、柊先輩は彼を一瞥した。
納得したように数度頷く。
「なるほど、そっちも記憶をいじれるわけか。確かに真白さんの言う通り“平等”だね」
「砂時計以外はな」
御影はそう気まぐれに口を挟んだ。
そういえば、わたしに貸してくれた砂時計と彼らの持つ砂時計は別ものだと言っていた。
時間を戻す効果は同じだとして、何がちがうんだろう。
そんなことを考えていると、柊先輩が真剣な表情でわたしに向き直った。
「とにかく、俺や真白さんがきみを狙ってたのはそれが理由だよ。元通りの正しい“今日”に戻すため。玲を救うためだ」
受け入れられるかどうかは別として、言いたいことは分かった。
わたしに向けられた殺意の内訳に、悪意が1ミリも含まれていないということも。
「実際、きみは何度も死んでる。……俺たちは正しい“今日”にたどり着いたはずだった」
続けられた言葉に、急速に体温が下がったような気がした。
(わたしが何度も死んでる……?)
わたしの死が本来の運命だということは、何となく理解していたはずだった。
けれど、実際にと聞かされると衝撃が計り知れない。
覚えているのは、真白さんに殺されたあの一度きり。
記憶がないだけで、それ以前に何度も命を落としていたなんて。
知らないところで何度も死んでいたなんて、とても信じがたくて寒気がする。
「でも、時間が巻き戻ったんだ。きみが死んで、玲は助かったのに」
「それって……」
「真白さんが教えてくれた。俺たちとは別に砂時計を使ってる誰かがいる、って」
息も忘れて立ちすくむ。
御影が笑みを深めたような気配がした。
「そのあと、展開が変わった。きみじゃなくて深山くんが死ぬようになったんだよ。きみを庇ってね」
重たい音を立てたきり、心臓まで止まってしまったかと思った。
予感が確信に変わっていくうち、冷えた肌が粟立つ。
信じられない気持ちで御影を見やった。
「まさか……郁実なの?」
砂時計を使っていたという、別の“誰か”。
何度も何度もわたしを庇い、命を落とした郁実の姿が脳裏を貫いた。
「ああ、その通り。あいつのはもう壊れちまったけどな」