御曹司社長の契約溺愛 シンデレラなプロポーズは、夜ごと甘く溶けて

第十七章:奪い返すかのような激しさ

鳴神響との接触を知った夜、神楽坂蓮は契約という名の理性を完全に手放し、琴音への愛と独占欲を爆発させた。その愛の証は、琴音の心と体、そして寝室のシーツに深く刻み込まれていた。

翌朝、蓮は昨夜の激情を押し込めるように、静かに身支度を整えていた。その顔は、いつも以上に冷たく、そして疲労の色が濃かった。

「蓮、昨日はごめんなさい……。そして、ありがとう」
琴音は、ベッドの中からそっと声をかけた。
蓮は、ネクタイを締めながら、鏡越しに琴音を見た。
「謝罪は不要だ。だが、感謝もいらない。君は、私の独占欲を満たしたにすぎない」

言葉は冷たいが、蓮の表情には、以前のような冷徹さはない。愛を自覚した男の、不器用な照れ隠しだと琴音には分かっていた。

「私の独占欲を満たすことが、あなたへの愛だもの。これからも、満たし続けるわ」
琴音はそう言って微笑むと、蓮は軽くため息をついた。
「君は、私を飼いならそうとしているのか。生意気な女だ」

蓮は、そう言い捨てると、琴音の額に軽く唇を押し付け、仕事へと向かった。そのキスは、契約結婚を始めた頃の冷たい儀式ではなく、紛れもない、愛する妻への挨拶だった。

しかし、蓮の心の嵐は、まだ終わっていなかった。
その日の午後、真柴が持ってきた報告書の中に、ある画像データが含まれていた。それは、鳴神響が琴音に手を差し伸べ、ラウンジで密会している瞬間の、遠距離からの写真だった。

蓮は、オフィスでその写真を見た瞬間、冷静さを失いかけた。昨日、琴音は鳴神の誘いを断ったと告白したが、この写真が示すのは、琴音の動揺と、鳴神の明確な奪取の意図だ。

(あの男が、彼女の顔に触れそうになっていた!私の妻に、触れる権利など、誰にもない!)
蓮の怒りは、琴音が誘いを拒否した事実よりも、他の男が琴音に近づいたという事実、そして琴音がそれに動揺しているように見える写真の構図に、完全に支配された。
彼はすぐに会議を打ち切り、タワーマンションへと急いだ。

夜、蓮は帰宅するなり、琴音を抱き締めた。
「蓮?どうしたの、今日は早いわね」
「君に会いたかった」
蓮はそう言いながら、琴音を強く、強く抱き締めた。その力は、骨が軋むほどで、嫉妬と愛が混ざり合った、焦燥の色が濃い。

「鳴神の奴め……!」
蓮は、低い声で呻くように、鳴神の名を呟いた。
「あの男が君に触れようとした写真を見た。君の動揺が、私には手に取るように分かる」
琴音はハッとした。鳴神が手を差し伸べたあの瞬間、彼女は確かに動揺していた。しかし、それは蓮を裏切るものではない。

「蓮、違うわ。あの時、私は……」
「言い訳は聞きたくない。私の隣にいながら、他の男に心を揺らがせるなど、許さない」
蓮は、琴音の服を容赦なく引き裂いた。それは、所有権を再確認するための、乱暴な行為だった。

「君の体と心に、私以外の影など、一瞬たりとも残さない。君が誰の妻で、誰の愛によって満たされているのか、私の体で、徹底的に思い知らせてやる」

蓮のキスは激しく、そして、どこまでも貪欲だった。
彼は、琴音の肌に残された過去の記憶さえも、すべて燃やし尽くそうとしているかのようだった。
「君は私のものだ!君の肌の感触も、吐息も、鳴神などという三流の男に渡すものか!」

蓮の言葉は、怒り、激情、そして切実な愛の叫びだった。彼は、愛という不確かなものを否定しながらも、その愛を失うことには耐えられなかった。

琴音は、彼の激情を受け止めながら、彼の耳元で囁いた。
「私は、あなただけよ、蓮。鳴神社長の誘いを断ったのは、あなたを愛しているから。あなたが、私以外の誰にも、私を渡したくないって知っているからよ」

琴音の純粋な愛の告白は、蓮の怒りの炎を、瞬時に愛の熱に変えた。
「ああ、そうだ!私は君を誰にも渡さない!契約を越えて、君を私の愛で、永遠に支配する!」

彼は、激しく、深く、そして優しく、琴音を求めた。それは、奪い返すかのような情熱と、二人の絆を確固たるものにする、愛の証明だった。

愛の交わりの中で、琴音は蓮の孤独と、彼が自分をどれだけ必要としているかを再認識した。そして、蓮もまた、琴音の純粋な愛が、彼の冷たい世界を温め、彼に生きる真の合理性を与えていることを確信した。

激しい情事の後、蓮は琴音を強く抱き締めたまま、何度もその名を呼んだ。
「琴音……私のものだ。私の、愛しい妻だ」
二人の愛は、嫉妬という試練を経て、契約という冷たい壁を完全に破壊し、より深く、熱いものへと進化を遂げた。
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