御曹司社長の契約溺愛 シンデレラなプロポーズは、夜ごと甘く溶けて
第五章:昼と夜の顔
朝、望月琴音は目を覚ました。隣には、すでに神楽坂蓮の姿はない。
体がだるい。全身に昨夜の激しい情事の痕跡が残っているのを感じ、顔が熱くなる。
(これが……契約の、初夜)
昨夜の彼は、ビジネスの現場で見る冷徹な社長の顔とは、まるで別人のようだった。情熱的で、貪欲で、そして、琴音のすべてを支配しようとする独占欲に溢れていた。
ベッドから起き上がり、バスルームへ向かう。大理石の床を踏みしめ、鏡を見ると、首筋には彼に付けられた赤い痕がいくつも残っていた。
(消さなきゃ……)
この痕が、夜の彼の証明だ。昼間は、彼の「完璧な妻」として振る舞わなければならない。
バスルームを出ると、ベッドサイドテーブルに一枚のメモが置いてあった。
「午前九時に真柴が来る。身支度を整え、指示に従え。昼には戻る」
蓮
短い、業務連絡のような文字。夜の情熱的な愛の交わりとは裏腹に、そこには私情が一切含まれていない。
琴音は、彼の「昼の顔」と「夜の顔」の、あまりにも大きなギャップに、改めて戸惑いを覚えた。
九時ちょうどに、秘書である真柴が完璧な身だしなみで現れた。
「おはようございます、望月様。社長からの指示により、本日から正式に『神楽坂家の妻』としてのレッスンを開始いたします」
「おはようございます。あの、真柴さん、社長は……」
「社長は朝早くから会議のため、本社へ向かわれました。社長にとって、仕事は契約以上に最優先事項でございます」
その言葉に、琴音は再び現実を突きつけられる。自分はあくまで、彼の契約の一部。昼間は、その契約を円滑に進めるための「商品」として磨かれるのだ。
レッスンは苛烈だった。
テーブルマナー、高級ブランドの知識、社交界での挨拶、歩き方、そして、蓮の好みや、彼が関わるビジネスに関する知識。
「神楽坂家の妻として、社長の隣に立つ限り、その知識は当然のたしなみです。社長は完璧を求めます」
真柴は常に冷静で、厳しかった。琴音が少しでも間違えると、容赦なく訂正が入る。
午後になり、真柴が用意したクローゼットの洋服の中から、シックなワンピースに着替える。これまでバイトで着ていた安物の服とは違い、体に馴染み、美しく見えるよう計算されたドレスだ。
(この服も、この生活も、全部彼が用意した「契約」の一部……)
夕方五時。真柴が帰宅した後、琴音は一人、蓮の帰りを待っていた。広いリビングは、夕焼けに照らされても、冷たい。
カチャリ
玄関の重厚な扉が開き、蓮が帰ってきた。疲労の色を見せない、完璧な顔。
「真柴から報告を受けた。レッスンは順調のようだな」
蓮は、コートとブリーフケースを執事に預け、ワインセラーへと向かう。
「はい。ただ……覚えることが多くて」
「努力しろ。君の努力は、君自身の価値を高める。そして、それは私の隣に立つ妻の価値、つまり私の価値に直結する」
蓮の言葉は、相変わらず冷徹で合理的だ。
彼は、ワイングラスを二つ手に取り、ソファに座る琴音の隣に座った。
「飲め」
グラスの一つが、琴音に差し出される。
「ありがとうございます」
グラスを受け取ると、フルーティーだが深みのある香りが立ち上った。
蓮は、ワインを一口含むと、唐突に琴音に顔を近づけた。
「昼間、真柴とどこまで進展した?」
「え?マナーと、ブランドの勉強を……」
「そうではない」
彼の指が、琴音の口元を拭うかのように触れる。
「君の首筋に、私のものだという痕跡がある。それを、真柴に見られたのか」
琴音はハッとして、首元を隠した。
「い、いえ、もうメイクで隠したので……」
「メイク、か」
蓮は面白がるように微笑んだ。それは、昼間の冷たい顔とは全く違う、男の顔だった。
「隠すな、琴音」
蓮は、琴音の顎を再び掴み、優しく、しかし有無を言わせぬ力で持ち上げた。
「私の前で、君は常に正直でなければならない。そして、私の痕を隠す必要もない。君が誰のものか、誰に抱かれているのかを、皆に知らしめることが、私の独占欲を満たす」
「でも、それは……」
「だが、まだ公の場ではない。だから、真柴の前では隠すのは合理的な判断だ」
彼はそう言いながら、琴音の髪をかき上げ、隠された首筋の痕に、そっと自分の唇を押し付けた。
「っ……!」
昼間の、優しさに似た愛撫。しかし、その行為が持つ意味は、強烈な支配と独占だ。
「この生活は、昼と夜で色が違う。昼の君は、私を支える完璧な妻。そして夜の君は、私だけを熱狂させる愛欲の道具だ」
彼はそう囁くと、ワイングラスをテーブルに置き、琴音の細い肩を抱き寄せた。
「そして、私は今、夜の君を求めている」
冷徹な社長の仮面が完全に剥がれ落ち、そこにはただ、独占欲に駆られた一人の男の熱があった。
豪華なリビングルームは、一瞬にして夜の閨へと変わる。琴音の体は、彼の言葉と体温に反応し、彼の独占欲という名の愛に、次第に囚われ始めていった。
体がだるい。全身に昨夜の激しい情事の痕跡が残っているのを感じ、顔が熱くなる。
(これが……契約の、初夜)
昨夜の彼は、ビジネスの現場で見る冷徹な社長の顔とは、まるで別人のようだった。情熱的で、貪欲で、そして、琴音のすべてを支配しようとする独占欲に溢れていた。
ベッドから起き上がり、バスルームへ向かう。大理石の床を踏みしめ、鏡を見ると、首筋には彼に付けられた赤い痕がいくつも残っていた。
(消さなきゃ……)
この痕が、夜の彼の証明だ。昼間は、彼の「完璧な妻」として振る舞わなければならない。
バスルームを出ると、ベッドサイドテーブルに一枚のメモが置いてあった。
「午前九時に真柴が来る。身支度を整え、指示に従え。昼には戻る」
蓮
短い、業務連絡のような文字。夜の情熱的な愛の交わりとは裏腹に、そこには私情が一切含まれていない。
琴音は、彼の「昼の顔」と「夜の顔」の、あまりにも大きなギャップに、改めて戸惑いを覚えた。
九時ちょうどに、秘書である真柴が完璧な身だしなみで現れた。
「おはようございます、望月様。社長からの指示により、本日から正式に『神楽坂家の妻』としてのレッスンを開始いたします」
「おはようございます。あの、真柴さん、社長は……」
「社長は朝早くから会議のため、本社へ向かわれました。社長にとって、仕事は契約以上に最優先事項でございます」
その言葉に、琴音は再び現実を突きつけられる。自分はあくまで、彼の契約の一部。昼間は、その契約を円滑に進めるための「商品」として磨かれるのだ。
レッスンは苛烈だった。
テーブルマナー、高級ブランドの知識、社交界での挨拶、歩き方、そして、蓮の好みや、彼が関わるビジネスに関する知識。
「神楽坂家の妻として、社長の隣に立つ限り、その知識は当然のたしなみです。社長は完璧を求めます」
真柴は常に冷静で、厳しかった。琴音が少しでも間違えると、容赦なく訂正が入る。
午後になり、真柴が用意したクローゼットの洋服の中から、シックなワンピースに着替える。これまでバイトで着ていた安物の服とは違い、体に馴染み、美しく見えるよう計算されたドレスだ。
(この服も、この生活も、全部彼が用意した「契約」の一部……)
夕方五時。真柴が帰宅した後、琴音は一人、蓮の帰りを待っていた。広いリビングは、夕焼けに照らされても、冷たい。
カチャリ
玄関の重厚な扉が開き、蓮が帰ってきた。疲労の色を見せない、完璧な顔。
「真柴から報告を受けた。レッスンは順調のようだな」
蓮は、コートとブリーフケースを執事に預け、ワインセラーへと向かう。
「はい。ただ……覚えることが多くて」
「努力しろ。君の努力は、君自身の価値を高める。そして、それは私の隣に立つ妻の価値、つまり私の価値に直結する」
蓮の言葉は、相変わらず冷徹で合理的だ。
彼は、ワイングラスを二つ手に取り、ソファに座る琴音の隣に座った。
「飲め」
グラスの一つが、琴音に差し出される。
「ありがとうございます」
グラスを受け取ると、フルーティーだが深みのある香りが立ち上った。
蓮は、ワインを一口含むと、唐突に琴音に顔を近づけた。
「昼間、真柴とどこまで進展した?」
「え?マナーと、ブランドの勉強を……」
「そうではない」
彼の指が、琴音の口元を拭うかのように触れる。
「君の首筋に、私のものだという痕跡がある。それを、真柴に見られたのか」
琴音はハッとして、首元を隠した。
「い、いえ、もうメイクで隠したので……」
「メイク、か」
蓮は面白がるように微笑んだ。それは、昼間の冷たい顔とは全く違う、男の顔だった。
「隠すな、琴音」
蓮は、琴音の顎を再び掴み、優しく、しかし有無を言わせぬ力で持ち上げた。
「私の前で、君は常に正直でなければならない。そして、私の痕を隠す必要もない。君が誰のものか、誰に抱かれているのかを、皆に知らしめることが、私の独占欲を満たす」
「でも、それは……」
「だが、まだ公の場ではない。だから、真柴の前では隠すのは合理的な判断だ」
彼はそう言いながら、琴音の髪をかき上げ、隠された首筋の痕に、そっと自分の唇を押し付けた。
「っ……!」
昼間の、優しさに似た愛撫。しかし、その行為が持つ意味は、強烈な支配と独占だ。
「この生活は、昼と夜で色が違う。昼の君は、私を支える完璧な妻。そして夜の君は、私だけを熱狂させる愛欲の道具だ」
彼はそう囁くと、ワイングラスをテーブルに置き、琴音の細い肩を抱き寄せた。
「そして、私は今、夜の君を求めている」
冷徹な社長の仮面が完全に剥がれ落ち、そこにはただ、独占欲に駆られた一人の男の熱があった。
豪華なリビングルームは、一瞬にして夜の閨へと変わる。琴音の体は、彼の言葉と体温に反応し、彼の独占欲という名の愛に、次第に囚われ始めていった。