明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
だんだん、水森先生の顔が近づいてくる。

「結婚しないか。僕と。」

「えっ……」

私は水森先生を見つめた。

「好きな人がいるままでいい。そのまま僕は珠緒さんを受け止めるから。」

私は顔を背けた。

「先生……私は……」

「ゆっくり考えて。僕は急がないから。」

そう言うと水森先生は、私から離れた。

どうしよう。水森先生が私と結婚したいだなんて。

まだこの胸の奥には、旦那様がいるというのに。

私は、夕暮れの中。窓ガラスから、外の景色を見た。

「旦那様……」

元気にしているかしら。

出張から帰って来て私がいないと知って、どう思っただろう。

今はただ、あの方が泣いていなけばいいと、思うばかりだけど。

私は胸の前で、ぎゅっと両手を握った。
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