明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
そしてその日は、静かに訪れた。

「ええっと、逢坂淳さんですね。」

「はい、逢坂淳です。その節はお世話になりました。」

余りのカッコ良さに、他の看護婦達が皆、旦那様を見ている。

「どうされました?僕はちょっと泌尿器科の方は、専門ではないのですが。」

産婦人科が主な水森先生の元に、男の旦那様が来るなんて、可笑しい。

「いえ、ただ風邪をひいて、薬を貰いに来ただけなのですが。」

「ああ、風邪薬ですか。分かりました。」

そして診察を終え、旦那様が診察室から出て行こうとした時だ。

「白河さん、これカルテ。」

水森先生が私の名前を呼んでしまった。

「白河?」

その瞬間、旦那様と目が合った。

「珠緒!」

私はカルテを持って、診察室を逃げ出した。

まさか白衣姿で、気づかれるなんて思いもしなかった。

「待ってくれ、珠緒!」

だけど廊下で、旦那様に捕まってしまった。
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