あなたに殺された聖女の私
プロローグ
アストレナ国の王太子カイレムと、ダルセイド公爵令嬢イブリンの結婚式は、息を呑むほどの華麗さと壮大さで幕を開けた。その祝祭は近隣諸国から王族や貴族も招き、朝から夜にかけて、挙式、パレード、披露パーティーと、途切れることなく続いた。
夜の帷がとうに下りたというのに、王宮内は煌々と明るく、人々は祝宴に酔いしれていた。
その一方で、街並みも今日という特別な日を祝うかのように賑やかだった。あらゆる飲食店が夜遅くまで店を開け、客たちは杯を交わし、心地よい酔いに身を浸す。
それほどまでに、この結婚は人々の望みだった。王太子カイレムが聖女として崇められるイブリンを王太子妃に迎えることで、この国の未来が約束されたかのように信じているからだ。
そんな期待を背負う主役のふたりは、賑やかな祝宴の場を早々に切り上げ、静かな室内へと戻っていた。
人々はきっと、ふたりが初めての夜を迎えるための特別な時間だと考えていただろう。
しかし、イブリンの顔は恐怖に引きつり、険しい表情を浮かべている。
「カイレム……」
朝から続く慌ただしさのせいか、イブリンの顔には疲労が色濃く表れていた。美しいドレスを脱ぎ、寝衣姿となっているにもかかわらず、その姿には色気のかけらもない。青い瞳は不安げに揺れ動き、整えられたピンクゴールドの髪も乱れ、どこか憔悴しているように見える。
初夜を迎える緊張のせいだろう、という雰囲気ではなかった。
「とりあえず、座ろうか」
カイレムはイブリンにソファをすすめ、緊張を和らげようと果実酒をグラスに注いだ。
夜の帷がとうに下りたというのに、王宮内は煌々と明るく、人々は祝宴に酔いしれていた。
その一方で、街並みも今日という特別な日を祝うかのように賑やかだった。あらゆる飲食店が夜遅くまで店を開け、客たちは杯を交わし、心地よい酔いに身を浸す。
それほどまでに、この結婚は人々の望みだった。王太子カイレムが聖女として崇められるイブリンを王太子妃に迎えることで、この国の未来が約束されたかのように信じているからだ。
そんな期待を背負う主役のふたりは、賑やかな祝宴の場を早々に切り上げ、静かな室内へと戻っていた。
人々はきっと、ふたりが初めての夜を迎えるための特別な時間だと考えていただろう。
しかし、イブリンの顔は恐怖に引きつり、険しい表情を浮かべている。
「カイレム……」
朝から続く慌ただしさのせいか、イブリンの顔には疲労が色濃く表れていた。美しいドレスを脱ぎ、寝衣姿となっているにもかかわらず、その姿には色気のかけらもない。青い瞳は不安げに揺れ動き、整えられたピンクゴールドの髪も乱れ、どこか憔悴しているように見える。
初夜を迎える緊張のせいだろう、という雰囲気ではなかった。
「とりあえず、座ろうか」
カイレムはイブリンにソファをすすめ、緊張を和らげようと果実酒をグラスに注いだ。
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