あなたに殺された聖女の私
 イブリンにグラスを差し出したが、彼女は受け取ろうとしない。仕方なくカイレムが一口飲み、グラスをテーブルに戻した。
「カイレム。私、パーティーで見てしまったの」
「何を?」
 眉をひそめ、カイレムが即座に聞き返した。
「ユリセナがいた……」
 その名に、カイレムもひゅっと息を呑む。
 聖女ユリセナ。いや、正確には元聖女。そしてかつてカイレムの婚約者だった女性。
「ユリセナだと? だが、彼女は……」
 ある日を境に、忽然と姿を消した。関係者は慌てて探し回ったが、それ以降、聖女ユリセナの姿を見た者はいない。
 その後、聖女見習いだったイブリンが正式に聖女となり、カイレムと婚約し、今日、盛大に結婚式を挙げた。
 それなのに、いなくなったユリセナがこのタイミングでふらりと戻ってきたのだろうか。
 イブリンは青い瞳を大きく見開き、カイレムの両腕にしがみついた。
「カイレム。誰にも言わないって、約束してくれる?」
「何をだ?」
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