運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
 けれど、アレクの仏頂面を思い浮かべると、器用に女性たちをなごませる様子が少しも想像できなくて、ひとまず納得する。エマの話は気づかいでもなんでもないだろう。

 って……、どうしてそんなこと気にしなきゃいけないのよ。何人婚約者がいようが、何十人とお茶会を開こうが、全然関係ないのに。

「気になってるのは、違うことなんだから……」

 ふたたび、ぶつぶつとつぶやいてしまうが、これはぼやきでもなんでもない。

 アレクの舌にあるという痣の話……。クラリスが証言したのだから、信憑性は高い。彼の舌をこの目で確かめるためには、お茶会に行かないわけにはいかなかった。

「なに浮かない顔をしている。多少気に入らなくても、社交の場では愛想よくするものだ」

 真っ赤な薔薇に囲まれた、真っ白な円形テーブルの前に進み出るなり、アレクの厳しい声が飛んでくる。

 長い足を組んで、ふんぞり返るように腰かけている、そういう彼の方こそ愛想がない。そんな彼の様子にセレナはすっかり慣れてしまっていて、軽く聞き流すと、そっと辺りをうかがい、アレクへと目を戻す。

「お早いですね。レオン様とクラリスはまだ?」
「レオンがクラリスを迎えに行った。じきに来るだろう」

 よかった。ふたりきりではないみたい。少し心配していたのだ。クラリスが妙な気を利かせるんじゃないかと。セレナはホッと胸をなでおろし、エマを振り返る。
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