運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
「エマは部屋へ戻って。ついてきてくれて、ありがとう」
「かしこまりました」

 エマはにこりとほほえんで、頭をさげると立ち去った。

 しかし、エマを帰らせたのはいいけれど、とても気まずい。アレクと目を合わせると、彼もなんだか居心地悪そうに顔を背けてしまう。

 困っていたのも束の間、仲睦まじそうに現れた男女の姿を見つけると、セレナは安堵の笑みを浮かべた。

「あっ、セレナ。本当に来てくれたんですね。アレク様も、ごきげんよう」

 早足で駆け寄ってくるクラリスに手を引かれ、テーブルに腰かける。右手にクラリス、正面にアレク。そして、左手に座るレオンが話しかけてくる。

「久しぶりだね、セレナさん。王宮での暮らしにすっかり馴染んだようだね。退屈はしてないかい?」
「はい、おかげさまで。最近は、部屋と図書館の往復ばかりですけど、毎日が楽しいです」
「それはよかった。少しは心配していたんだよ」
「心配……ですよねぇ」

 セレナは薄く笑う。まあ、心配など多々あるだろう。思いあたることしかない。

 メイドがティーセットを運んでくる。まず、アレクがティーカップを口もとに運ぶ。

 その様子をセレナはじっと観察した。驚くほどに美しい姿勢で紅茶を楽しんでいる。とてもではないが、舌がのぞき見れる気はしない。仕方ない。別のチャンスをうかがおう。
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